ヒメシロアサザ

 円山川のヒメシロアサザの歴史をちょっと語ってみます。
 
 1999年10月21日に発見された。場所は、ひのそ島の希少種
を保全するために栽培試験をしていた試験地。試験地の東側に広く生
育していた。試験地は、タウコギ、タコノアシ、ホソバイヌタデ、ヤ
ナギヌカボの生育試験のための場所で、ヒメシロアサザのための場所
ではなく、誰もそこにヒメシロアサザがあるとは思ってもみなかった。
一部は、試験地ではなく、中央の通路にも生育していた。試験地の様
子は、ヤナギヌカボは、非常に旺盛に生えていたが、あとはしょぼく
て、成功とはとてもいえない状況だったが、予期せぬヒメシロアサザ
の出現で大成功という感じになってしまった。詳しく調べると少なく
とも50株は生えている。花をつけている個体はなく、このまま消え
てしまうのではと心配になる。
 
 10月23日に掘り採った1株は、しばらくして花を1つ咲かせた。
 
 ちょっと調べてみると
 種の整理がついていない植物のようだ。池に生えるものと水田に生
えるものがあり、絶滅が危惧されるような場所がある一方で、水田雑
草状態ではびこっているところもあるという。また、沖縄に似た種が
ある。ある図鑑には、多年草で、殖芽で増えると書かれているが、他
の図鑑には1年草で種子で越年すると書かれているように種の実態も
明らかになっていない。これからの研究が待たれるが、研究するだけ
の個体数が揃わないというような植物ではないかと思われる。
 
 ヒメシロアサザは産地による遺伝的変異が大きいらしい。また「稀
産種」ということで水草マニアや業者にも狙われているらしい。とい
う結構やっかいな植物のようだ。
 
 円山川のヒメシロアサザは日本海側では2例目のものらしい。
 今年(1999年)、松江でも見つかっているそうで、日本海側に
もあるらしいと言うことが分かってきて、続々見つかるのかも知れな
い。見つかり出したら見つかるものだ、たいていは。
 
 私の聞いている範囲では、淡路に数カ所、神戸に1ヶ所(すでに絶
滅)、但馬に一ヶ所生育している。
 
 さて、このヒメシロアサザはどこから現れたのだろうか?
 種子はどこから来たのか? 可能性は2つある。一つは、上流から
運ばれてきたという可能性。初夏の増水で泥をかぶったところから出
てきている。もともと、池や水田に生育する植物だから、可能性は否
定できない。もう一つの可能性は、ひのそ島の土壌由来だ。この植物
の出てきたのはひのそ島の稀少植物を栽培する試験地だ。先の増水で
泥をかぶった場所に、もう一度ひのそ島の土をまいたところに出てき
ている。こちらの可能性の方が高いと思う。とはいうものの、上流の
水田にもかつてはあったと思う方が自然だと思う。(その後、ひのそ
島の土を採取した場所を調査したが、ヒメシロアサザは発見されなか
った)
 
 ヒメシロアサザは水生植物だが、試験地は、乾燥しており、湿地状
態でさえない。また、増水でいつ泥をかぶるか分からない。放置して
おいても、消えるだけだと考えられる。私の見た個体には、殖芽とも
果実とも判然としないものが付いていたが、放置するよりも栽培した
方がより安全であると判断した。
 
 11月28日に、20株ばかりを掘り採り、半分を上田さんにあず
けて、水槽に入れてもらう。ヒーターで水温を18度にして、植木鉢
を沈めて、数cmの水をかぶるようにしてもらう。水槽の上はラップ
で覆っておく。数日で新しい葉を出した。残り半分は、知人にあずけ、
こちらはランの温室に入れてもらった。
 
2000年2月下旬
 豊高でヒメシロアサザが発芽。
 
 3月13日の上田さんの報告
 
 本日やっと芽生えがヒメシロアサザであることが確認できました。
最初の双葉は細い葉でした。次にちょうどチドメグサのような葉にな
りやっと8枚目にして特徴あるハート型のくびれがあらわれました。
芽生えはたくさんあったのですがヒメシロアサザと思わず油断しまし
た。かたまって数本芽生えがあったところは2本になってしまいまし
た。おそらくこれは例の何とかから芽が出たのですね。
 越冬したのは1本だけで息絶え絶えです。水温を18度前後に保ち
水槽にラップをかけていましたから、ひ弱に育っているかもしれませ
ん。いつラップを取ろうか迷っています。それからやはり水深が心配
です。今のところ根本にひたひた程度で葉は空中に伸びています。深
くするとまた枯れるでしょうか?
 
 今から考えると、試験地にあったのは、ヒメシロアサザの陸水型で、
本来の浮葉型ではなく、図鑑の記述とも違い、専門家の指示通りにす
ると(葉を数cm沈めるという指示)葉が枯れてしまうし、ほとんど
パニック寸前の頃だった。
 
 5月15日の上田さんの報告
 
 ヒメシロアサザの2回目の芽生えが始まりました。おそらくこれが
本来の芽生えの時期だと思います。水槽で保温していたため早く出す
ぎたのです。稲葉さんのところも注意してください。出ているかもし
れません。ちょっと厚めの長楕円形(かなり細い)の双葉です。
 
 8月1日の記録
 
 結局、1999年に、持ち帰ったものの中から、5株が越冬または
発芽した。昨年の小さな葉からは想像できない立派な葉を広げ、花を
咲かせた。その姿は、昨年のものと全く違い、本来の浮遊葉の姿は、
図鑑通りである。
 
 昨年の自生地(試験地)には全く見られない。
 
 ひのそ島でも確認できない。
 
 ということで、この年は、この5株が但馬にある全てと言うことにな
った。ランナー状に伸びていってどんどん広がって行こうとしているが、
これが1年草タイプであれば、種子かそれにかわるものをとっておかな
いと今年で終わりになるのではないかと危惧する。
て下さい。
 
 1株 コウノトリの郷公園 コウノピア
    5月に開花したが今は開花していない。ランナー状に伸びた部
    分が切れ、根が出ていたので、それを別の鉢に植えてある(4株)
    別株のものが落ち着けば、これらはビオト-プ田に移す予定。
 
 2株 県立豊岡高校
    状態は余りよくない。
 
 2株 個人宅
    1株は7月になって開花。現在開花中。ランナーを伸ばし
    つつあるので、平鉢を大きなものにかえてもらうようにお
    願いした。もう一株はまだ小さく開花していない。
 
 その後、郷公園の一株は、株分けで増え、大量の種子を水面に浮
かべた。個人宅でも盛んに花をつけ、ここでも大量の種子を浮かべ
た。そのうちの500個ばかりを人と自然の博物館のジーンバンク
に送った。3個体に由来する種子である。
 
2001年
 コウノピアで発芽した中の数株を休耕田ビオトープに植える。
 
 兵庫水辺ネットワークの会員に苗を渡す。
 
 円山川で新たな産地が発見される。
 
 
改訂版 レッドデータブックより
 
 ヒメシロアサザ  
  9000個体 100年後の絶滅確率100%
 
 
おまけ
 『遊ぼう学ぼう但馬の川と』のコラムのために書いたが採用されな
かった原稿
 
ヒメシロアサザ
 但馬の貴重な植物の項にヒメシロアサザがあります。この植物は
本来ため池や水田に生育するので河川の植物とは呼びがたいのです
が、1999年に円山川で発見されました。その時まで但馬にこの
植物が生えていたことは誰も知りませんでしたし、今でも他の場所
では見つかっていません。この植物は別の貴重な植物の栽培実験の
ために川の土を播いた中から芽が出てきました。長らく地中に眠っ
ていた種子が、土と共に掘り起こされて目覚め、全く偶然それが私
たちの目に触れました。発見された場所では姿を消しましたが、数
カ所で栽培されかろうじて絶滅をまぬがれています。水草の仲間の
種子は長く眠りますから、河原の土を深く掘って播くと絶滅を疑わ
れるドクゼリなども出てくるかもしれません。
 

at: 2001/11/29(Thu)

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