
ツユクサ ツユクサ科
ツユクサは早朝(4時~5時)に花を咲かせ始める。この花は、昼
頃にはしぼんでいる。露という字には「はかない」という意味がある。
また、ツユクサの葉の先端からは水滴ができてつゆのようになる。名
の通りの植物である。
そのはかなげな名の裏で、ツユクサは自分の子孫を残すために様々
な工夫をしている。
ツユクサの花は日の昇る前に咲き始め、昼にはもう閉じている。
ツユクサは花が閉じる際に、雄しべと雌しべが根元に向かってくる
くる巻いて来て、互いが絡んで同花受粉をする。これは、異花受粉が
できない時でも必ず種子を作るという工夫である。しかし、この方法
では、丈夫な子どもができにくい。丈夫な子どもを残すには、別の個
体からの花粉が必要になる。そのために巧妙な工夫がある。
ツユクサの花に昆虫が訪れるのは、まだ涼しい開花直後から9時く
らいまでである。ツユクサを訪れて花粉を運ぶのは、ハナアブやハナ
バチである。ツユクサは蜜を出さないので、彼らは花粉を目当てにや
ってくる。
ツユクサの花びらのうちの2枚は青色でよく目立つ。正面から見る
と青い花弁の下に同じくらい目立つ黄色い雄しべがある。垂直に立っ
たその花弁は、虫たちを正面からまっすぐ花に誘導するためにあるの
だろう。花に近づいてみると花びらは垂直なので虫は止まれない。し
かし、ちょうどいい案配に前方に突き出ているものがある。雄しべで
ある。雄しべの色は鮮やかな黄色で花粉がたくさんついていそうだ。
花粉や蜜がほしくて来ているのだ。これ幸いと虫はその雄しべの上に
止まって花粉を探す。こんなことが起きているのではと私は想像して
いる。
さて、この雄しべをよく見てほしい。上に3本、中に1本、下に2
本と合計6本ある。上中下で形も働きも違うのである。
上の3本は、鮮やかな黄色でX型をしている。飾り雄しべといわれ
るディスプレイ用の雄しべである。この雄しべはXの中心部の左右に
わずかに花粉を作るが、これは昆虫のエサ用で受粉能力のない偽物で
ある。X型は目立つのが仕事の雄しべなのである。そのために扁平に
なって面積を稼ぎ、いかにも花粉がありそうに黄色に着飾る。
中の雄しべは黄褐色で、人型をしている。逆Y型という人もある。
この雄しべは受粉可能な花粉を作る。小さなハナバチなどがX型に止
まるとちょうどそのハチのおしりがこの人型雄しべにくっつく。そこ
そこ目立つので花粉は盗まれる。
下の雄しべは、他の植物の雄しべと同じようなものだが、色は褐色
で目立たない。花粉を盗まれないように地味な色をしているのだろう。
飾り雄しべや人型雄しべに止まったハチやアブのおしりがこの雄しべ
にくっつく。この2本の雄しべの間には雌しべがある。別のツユクサ
の花にその虫が飛んでいけば受粉もうまくいくという訳だ。花粉が盛
んにでている時には、さすがに黄色くなる。この時には、賢いハナバ
チはもちろん賢くないハナアブでも、ここに花粉があることに気づき、
なめていく。
ツユクサは虫が多い環境では、異花受粉で多様な子どもを残し、虫
がいない環境では、同花受粉でとりあえず子どもを残す。こんな訳で
ツユクサは田舎から都会まで広く生育するのであろう。
at: 2003/08/17(Sun)