クロモジ

クロモジ


 
 私はこの木の香りが好きだ。山を歩いていて疲れてくるとこの木の
葉をちぎって香りをかぐことにしている。爽やかで元気の出る香りだ。

 クロモジは早春に黄色い花を咲かせる。低地のものは葉の展開と同
時に花を咲かせるが、兎和野高原くらいの標高になると葉の展開に先
んじて花を咲かせる。クロモジは、クロモジ(Lindera)属の植物だが、

この仲間は早春に黄色い花を咲かせる。早春に黄色い花を咲かせるの
は、他にはマンサク科とヤナギ科くらいだが、それらとは明らかに花
の姿が異なるので、種の区別はできなくても遠目からでもクロモジ属
の花であることが分かる。

 クロモジは、但馬では、「もちばなぎ」と呼ばれている。お正月に
この木の枝に、白や赤の餅をつけて花のようにして飾る。八坂書房の
『日本植物方言集成』をみると

 もちぎのき;鳥取
 もちのき;山形(飽海)
 もちばなぎ;兵庫
 もちばなのき;滋賀
 
 とある。但馬だけでなく、全国的に使っているようだが、資料から
は日本海側に偏っているようにも見える。全国の学校にメイルを送っ
て調べてみたいものだ。

 牧野富太郎は、「黒文字の意味で、樹皮上の黒い斑点を文字になぞ
られたものだろう」としており、多くの本がその説を紹介している。
若い枝は黄緑色だが、2~3年枝は黒くなる。しかし、私にはその黒

い斑点が文字には見えない。調べてみると他に「樹皮に地衣類の一種
が付着して、まるで文字を書いたようにみえる」(岡村はた他『新訂
・図解 植物観察図鑑』)、「京都御所で使われていた女房ことばに

由来する」(深津正『植物和名源語新考』)などがある。後者につい
ては、深津正・小林義雄『木の名の由来』や足田輝一『草木夜ばなし
・今や昔』にも取り上げられている。
 
 茶席で出される楊枝はクロモジで作られている。招かれた客は、こ
の楊枝を記念に持ち帰る。爪楊枝の最高級品もクロモジで作られる。
皮の部分を背に残してけずるので手間ひまがかかり熟練が必要となる。

そのため1人前になるのに10年もかかるという。一日に2000本
作る人もあるという。 

 先日の青少年のための科学の祭典では、笠浪さん(我々の世界では
竹野の怪しいファイヤーマン氏として有名な人)作のクロモジ製楊枝
を展示していたのだが、その時に「クロモジには雄と雌があるのを知

っているか」と尋ねられた。バイザーにちょっとメモしたところでは
「すらりとしていて上に大きくなる木と、横に広がって上には大きく
ならない木があって、雄ではお箸など大きなものを作り、雌の木では

楊枝を作る」ということだった。クロモジは雌雄異株で、花の咲く時
期も微妙に違う。木の姿も違うのだろうか。笠波さんによると雄は実
がつくそうだから、これは雌花をつける株で、本当は雄ではなく雌で

ある。姿と性は一致しないようだ。詳しく見てみないといけないなあ
と思う。

 西洋医学では、中に含まれる精油を抽出し、芳香性健胃剤として利
用する。浴料に利用するとよいらしい。変形による関節の痛み、腰痛、
座骨神経痛などに保湿性浴料として利用できるが、それ以前によい香
りでリラックス効果があるという。

 お酒のにおいづけに使った人もあるようだが、リキュールにはにお
いが強すぎるそうだ。いろんなことを試す人がいるものだ。

at: 2001/09/07(Fri)

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