水に浮かぶシダ植物です。全国的に害草として嫌われていました。
日本版レッドデータブックでは絶滅危惧Ⅱ類(VU)で、この本
には、全国の推定個体数は約6万個体で、このまま放置しておくと
100年後には100%の確率で絶滅すると書かれています。兵庫
県版レッドデータブックAランク(近い将来における絶滅の危険性
が極めて高い種)です。しかし、最近、近畿地方では生育地がたく
さん見つかり、準絶滅危惧種であるという判断になっています。近
く改訂される兵庫県版レッドデータブックでもランクが変更される
と思います。
少なくなった原因は、農薬汚染、土地造成、水質汚濁だろうとい
われていますが、私は乾田化が最も大きな影響を与えていると考え
ています。
5年ほど前まで兵庫県下では、豊岡市の1ヶ所でしか知られてお
らず、兵庫県で最も貴重なシダ植物の一つであるといわれていまし
た。ちょっと話を脱線しますが、もう1種、但馬にはヘイケイヌワ
ラビというさらに珍しいシダが生育するのですが、両種とも同じ方
が発見されています。その方は残念ながら但馬の方ではありません。
但馬の植物は、こんな話ばかりです。
話をオオアカウキクサに戻します。神戸にシダに非常に詳しい白
岩さんという方がおられます。この方が、オオアカウキクサも詳し
く調べておられて、但馬のオオアカウキクサと大阪周辺のオオアカ
ウキクサがどうも違うようだということに気づかれました。そのこ
とを人博の鈴木さんに話されました。半信半疑だった鈴木さんは、
アイソザイムというものを使って遺伝的な距離を求め、幾つかのオ
オアカウキクサを調べられました。すると3つのタイプが区別でき
たのです。その遺伝的な距離は、他の植物の場合では、「種が違う」
とされるほどの隔たりでした。その研究の成果として、オオアカウ
キクサに次の3タイプが区別されました。オオアカウキクサ「但馬
型」「大和型」「阿波型」です。但馬型は、当時兵庫県で唯一知ら
れていた豊岡市産のオオアカウキクサを材料にして区別されたので
「但馬型」なのです。全国的に調べてみると一番多くあるのが但馬
型で、全国各地にあります。オオアカウキクサに出会えば全国どこ
でも「但馬」ということばを出せます。但馬をアピールするのにと
ってもよい植物です。
その後、オオアカウキクサは各地で見つかり出しました。まず神
美で2ヶ所。1ヶ所は山裾の湧水のある田、もう1ヶ所は、ため池
の下の田です。関岡さんが発見されました。どちらも但馬型です。
しばらくして村岡町の棚田でも見つかりました。始めは、田の端に
わずかに見られただけでしたが、同じ機械で耕耘したせいか、隣の
田に横に横にと広く広がっていきました。これは大和型です。同じ
頃、氷上郡で大きな池を真っ赤に染める大群落が発見され、神戸新
聞でも大きく取り上げられました。これも大和型です。半坂池では
3年前に大和型らしいものが見られましたが、外来の園芸用水草
(アマゾントチカガミではないかと思う)と一緒に浮かんでいたの
で移入の可能性が高いと思います。但馬では、今年の春、浜坂町で
行った兵庫水辺ネットワークの観察会で、3ヶ所新たに発見されま
したが、いずれも外来のオオアカウキクサでした。1ヶ所は、合鴨
アゾラ農法の水田であり、もう1ヶ所は、そこにつながる川です。
残る1ヶ所は、非常に離れた場所ですので、人が運んだのか、鳥が
運んだのか不明ですが、いすれにしても同じもの
(Azolla microphylla;南米産)のようです。もう1件、思い出し
ました。そういえば、2000年に出石町のメダカ愛好家の池にも
同じく A.microphylla が浮かんでいました。これは、どうも園芸店
の水槽にも浮いているようです。いよいよ私の知っている最後の場
所ですが、それは、先の水辺ネットワークの観察会で、豊岡市の最
大の産地で観察していると、地元に方に、「○○にもっとある」と
いわれて夕方見に行くと確かにあったのです。悔しいことにその田
は、過去2回もゲンゴロウ・タガメ調査で見ている田なのです。そ
の時はなかったなあと思う私なのでありました。
オオアカウキクサはかつては、いたるところの田にありました。
唯一に近い但馬産の昔の標本を採られた林さんに「どこの田か教え
てください」と尋ねると「どこといわれても、谷の中のどこにもあ
った」といわれました。当時は、水温を下げるなどと嫌われていま
したが、最近では、緑肥に使えるとして利用されることもあります
(アゾラ農法、アイガモ田への投入)。そこで、豊岡市でも、数年
前に一部の田に但馬型を入れて試験をしましたが、高温に弱いよう
で、すぐに消えてしまいました。大和型は但馬型よりも高温耐性が
あるようですが、何も考えずに導入すると本来の自生地の分布が分
からなくなるという問題点があります。
アゾラの農法に使われている A.microphylla は、日本のオオアカ
ウキクサと形が異なるので区別できますが、A.filiculoides は、大
和型に近縁と考えられ、日本の自生のものと区別する方法はありま
せん。従って、とりあえず但馬でアゾラ農法を試みる場合は、但馬
型で試み、近くに大和型の自生があれば、大和型を試み、止むを得
ずに導入する場合はA.microphyllaを使うことが好ましいと思われま
す。
今回は、ちょっと話がまとまりませんがお許し下さい。
at: 2001/10/07(Sun)