豊岡盆地を流れる円山川は、下流部の勾配が非常に緩やかです。河口から9kmさかのぼっても、川底は1mほどしか高くなりません。河口から16km上流の出石川の合流点あたりまで海水が入ってきます。海水の影響が無くなるのは、豊岡市日高町の国府あたりです。支流の出石川でも五条大橋のあたりまでは海水の影響を受けます。海水と淡水が混ざった水を汽水と呼びます。円山川下流部は汽水域が長いことが特徴です。そのため、豊岡盆地の水辺には汽水域の魚類や海水魚も生息しています。

淡水魚は生活史の違いから、純淡水魚、通し回遊魚、周縁性淡水魚と、大きく3グループに区分されます。
〇 純淡水魚――海に下る事なく、一生を淡水域で過ごす魚。コイやドジョウ、ナマズなど。
〇 通し回遊魚――繁殖や稚魚の時など、一時期に海と川を行き来する魚。アユやサケ、ウナギなど。
〇 周縁性淡水魚――汽水魚や、本来は海水魚だが川にも入ってくる魚。ボラやスズキ、マハゼなど。
汽水域の魚類は、この区分のうち周縁性淡水魚に含まれるものが中心です。ただ、純淡水魚でも若干の塩分に耐えられるものがいることがありますが、今回は周縁性淡水魚に絞って紹介します。
豊岡盆地で見かける周縁性淡水魚のなかで、代表的なものを紹介します。前編ではボラやスズキなど中・表層で生活する遊泳魚、後編ではハゼ類など川底で生活する底生魚を紹介します。

サッパ Sardinella zunasi
ニシン目 ニシン科 全長15cm プランクトン食性
平べったい体をしているイワシの仲間です。円山川では堀川橋のあたりまで上ってきます。

コノシロ konosirus punctatus
ニシン目 ニシン科 全長25cm プランクトン食性
サッパに似ていますが、体にドット模様が並んでいることや背びれ後部の鰭条が長く伸びるなどの違いがあります。
円山川では堀川橋のあたりまで上ってきます。

ボラ Mugil cephalus cephalus
ボラ目 ボラ科 全長60cm 雑食性
胸びれの付け根に濃紺色の斑点がある事と、目の周りに脂瞼(しけん)という白い膜があることが特徴です。円山川では日高町まで上ってきます。八鹿まで上るという話もあります。円山川本流だけでなく、支流にもよく入ってきます。

メナダ Chelon haematocheilus
ボラ目 ボラ科 全長100cm 雑食性
ボラに似ていますが、眼がオレンジ色であることから見分けられます。豊岡では「あかめ」とか「あかめぼら」と呼ばれています。円山川本流だけでなく、支流にもよく入ってきます。

クルメサヨリ Hyporhamphus intermedius
ダツ目 サヨリ科 全長30cm プランクトン食性
下あごが長く、あごの先が黒いのが特徴です。下流の汽水域に生息しています。

サヨリ Hyporhamphus sajori
ダツ目 サヨリ科 全長30cm プランクトン食性
下あごが長く、あごの先が赤いのが特徴です。海の魚ですが、下流の汽水域に入ってきます。

ダツ Strongylura anastomella
ダツ目 ダツ科 全長100cm 動物食性
サヨリと違い、あごは上下両方とも長く伸びます。歯が鋭く、咬まれると大変危険です。但馬では「なんぐり」とも呼ばれています。円山川では堀川橋のあたりまで上ってきます。

スズキ Lateolabrax japonicus
スズキ目 スズキ科 全長100cm 動物食性
口が大きく、背びれや鰓蓋に鋭いトゲがあります。釣り人にはシーバスと呼ばれています。円山川では日高町まで上ってきます。本流だけでなく支流に入ってくることもあります。

マアジ Trachurus japonicus
スズキ目 アジ科 全長30cm 動物食性
よく知られているアジの仲間です。海の魚ですが、下流の汽水域に入ってきます。

ヒイラギ Nuchequula nuchalis
スズキ目 ヒイラギ科 全長30cm 動物食性
但馬では「しいのは」と呼ばれています。エサを食べる時、口が下向きに伸びるのが特徴です。円山川では堀川橋のあたりまで上ってきます。

クロダイ Acanthopagrus schlegelii
スズキ目 タイ科 全長70cm 雑食性
別名チヌと呼ばれています。幼魚の頃は縞模様があります。円山川下流部に多く、堀川橋のあたりまで上ってきます。

シマイサキ Rhynchopelates oxyrhynchus
スズキ目 シマイサキ科 全長40cm 動物食性
縞模様がよく目立ちます。夏から秋にかけて稚魚が川に上ってきます。河口から20km近くまで上ってくることがあり、出石川でも見つかることがあります。
以上12種類を紹介しました。他にも多くの種類が確認されており、今回の種類も含めると円山川には50種類もの周縁性淡水魚が生息していることを確認しています。
後編ではハゼ類など、川底に棲む底生魚を紹介します。