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鳥取県視察研修

(文・写真 コウノトリ市民研究所研究員 稲葉一明/高橋 信)


気高町日光地区の湛水水田で暮らすコハクチョウ
気高町日光地区の湛水水田で暮らすコハクチョウ

◆実施日 2003年1月25日(土)〜26日(日)

◆参加者  市民研究所  上田、菅村、稲葉、高橋、大槻、鳴海、谷上
     コウノピア  浜田

◆視察場所
(1)鳥取県米子水鳥公園(鳥取県米子市彦名新田665 TEL:0859-24-6139/FAX:24-6140)
   対応者:米子水鳥公園ネイチャーセンター 指導員 神谷 要

 米子水鳥公園は、豊岡と同じ山陰にあります。米子の水鳥の様子や環境は、豊岡の自然
 環境を考えるとき、かならず参考になるはずです。米子に行くガンやハクチョウたちに
 とって、豊岡盆地はなぜ通過点なのか。もちろん、宍道湖を中心として環境の規模は違
 いますが、円山川下流域の環境は、ガンが越冬地にするぐらいのところまで持っていけ
 ないものでしょうか。

(2)とっとり花回廊(鳥取県西伯郡会見町鶴田110 TEL:0859-48-3030/FAX:0859-48-3040)
   米子道溝口ICより西へ10分、開館9:00〜17:00

 鳥取県西部、標高1711メートルの大山を間近に望むフラワーパーク。総面積50ヘクター
 ルと日本最大の規模を誇る園内には、400種180万本もの草花が咲く。園の中心に位置す
 る直径50メートル、高さ21メートルの温室「フラワードーム」や一周1キロメートルの
 屋根付き展望回廊があり、雨の日でも花を見ることが出来る。

(3)冬季湛水水田(鳥取市小沢見(こぞみ)水田 国道9線沿い位置:134.6.39E/35.31.11N
   気高町日光地区の水田位置:134.4E/35.30N)

 冬季湛水メーリングリストからの抜粋:鳥取市に入ってすぐの小沢見(こぞみ)の9号線そ
 ばの湛水水田にコハクチョウほか、マガモやコガモ、オナガガモ、ヒドリガモが飛来、
 小さな場所だが冬季の湛水によってすばらしい環境が創造されている。冬場田んぼに塩
 水が入らないように海辺の堰を止めることによって、雨水が溜まって湛水され、故意に
 やっているわけではなく、長い歴史があるようだ。

◆宿泊場所 日吉津村 海浜運動公園[バンガロー]
 (鳥取県西伯郡日吉津村日吉津1864-1 TEL:0859-27-7390/FAX:0859-27-7390)

 川を挟んで皆生温泉の隣、5時半までに管理棟へ、キッチン・バストイレ・暖房あり、
 各自寝袋、食器持参のこと。2棟あり、収容人数20名。
 1月25日(土)

 9:00、コウノトリの郷公園駐車場集合し、高橋・大槻の両CR-Vに荷物を積み込む。バンガローで宿泊ということで、市民研究所自慢の調理道具類やツーバーナーを積み込む。実は僕は風邪を引き、おそらくインフルエンザだと思うのだが、声が出にくく、咳も止まらない。それで風邪気味の人と健常者とに分乗してはどうかと提案した。

 高橋車に、上田、鳴海、谷上。大槻車に菅村、浜田、稲葉と分乗。菅村さんはマスクをしていたが、これは感染予防のためであって、別に風邪を引いているわけではなく、大槻さんも小学校でいつも風邪のウィルスにはさらされているので、別に風邪を引いているわけではないようであり、さらに浜田館長に至ってはまったく健康体であり、要するにみんな風邪を引いている僕からの感染の危険を冒しながらも、おおらかに同乗してくれていたのである。心から感謝いたします。

コウノピア出発風景  この日は11時半から上田さんがFMジャングルの「知識の泉」というコーナーに出なければいけない日だったので、どうするのかと心配していたのだが、携帯電話で車の中から出演するということらしい。できれば同乗しその様子を観察したいと思っていたのであるが、そのことについては残念であった。

 9:20ごろから結団式を行い、上田代表の挨拶、浜田館長のお言葉、佐田さんからの激励の言葉をいただき、西川さん、雑賀さんの盛大な見送りを受けながら我々は出発した。水鳥公園へ行ったことのある高橋車の先導により、一路鳥取県へ向かったのであるが、行きは海沿いではなく、八鹿から9号線を通って行こうということになった。しかし運悪く9号線沿いの民家で火事があり、関宮町に入ったあたりから渋滞に巻き込まれ、我々は出発早々40分ほどのロスをこうむってしまったのである。

 11時過ぎに村岡ファームガーデンの道の駅で休憩し、上田さんのFMジャングル出演がちょうどトンネルの中で携帯電話がつながらなくなるのではないかと心配したが、鳴海さんの話によると、きょうびの携帯電話はトンネルの中も平気で、特に9号線という立派な幹線道路である限り、携帯が繋がらないなどということは絶対にないらしい。それはR178の土生トンネルや江野トンネルなどでも実証されているとのことであった。実際には、春来トンネルを越えた時点でFMジャングルの増田さんから電話が鳴り、そのまま出番待ちに入ったが、電波状態が悪くて一度切れてしまい、ちょうど温泉街のあたりで再び携帯が鳴り、そのままオンエアーとなったそうである。FMジャングルは美方郡ではまったく受信できないのが残念であった。

 美方郡から鳥取県に入り、鳥取市街を抜けると、9号線沿いに2ヶ所の冬季湛水水田を確認した。冬場に水が張られている水田は珍しいから、少し注意していれば十分に気がつく。2日目の目的地が確認できて一安心。気高町からは海沿いに、広々とした畑地を9号線は抜けていく。たまたま天気が良いだけなのか、燦燦と日は降り注ぎ、菜の花も咲いている。遠くに大山が遠望できる広大な風景。とても同じ山陰とは思えない。浜村温泉、鹿野温泉、羽合温泉、太平記で有名な名和町、船上山などの地名が出てくる。1時ごろに大栄町の道の駅で昼食をとった。1,000円のバイキングにドライバー以外はビールを少し。長芋の揚げ物やとろろ芋がバイキングにあるところがなかなか鳥取県であった。

米子水鳥公園案内図、図の右端がネイチャーセンター  再び一路米子水鳥公園を目指す。大栄町の道の駅を出るときに浜田館長がなかなか出てこないので、先導の高橋車と車間が開いてしまった。しかし我々は着実に水鳥公園へ向かっていたのであるが、もう目前というところで、上田さんから携帯が入ってきた。念のため道を確認すると、どうも我々の向かっている方向は間違っているらしい。これは方向修正をすべきだとの結論にいたり、どうもあと一歩のところであらぬ方向へ曲がってしまい、約15分間は遠回りをしてしまったのである。予定より大幅に遅れて3時前にようやく到着。火事渋滞や道に迷ったことによる遅れを差し引いても、豊岡から5時間ではちょっと苦しいようだ。

ネイチャーセンターで神谷さんの説明を受ける  ネイチャーセンターで水鳥公園レンジャーの神谷さんに解説と案内をしていただき、中海干拓とコハクチョウのねぐらの関係。この施設のできた経過、運営、ボランティア、冬季湛水水田の意義、等々、たいへん参考になるお話を伺い、あっという間に5時前になってしまった。一部には、30分ほど見たらもう見るもんなくなるぞ、という心配もあったのであるが、できれば1時半ぐらいには到着し、もっとゆっくりとできればよかったと思う。

 昼間はコハクチョウは採餌に田んぼへ出ているので、公園内にはあまりいなかったが、カモ類を中心に多数の水鳥がいる。ツクシガモ2羽が目前で観察されたが、非常に珍しいもののようで、鳥の人には嬉しいことのようであった。水鳥公園での様子は、高橋研究員が別途レポートしているのでそれを引用させて頂く。

<引用開始>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

【米子水鳥公園】

水鳥公園内のコハクチョウ  駐車場から10分ほど歩いてビジターセンターに入る。入場料は210円。途中の水路に1羽のコハクチョウが浮かんでいた。センターの前、ガラス越しに広がる中海の干拓予定地がNPOの保護運動によって開発をまぬがれた水鳥のサンクチュアリー。オナガガモが圧倒的に多い。コガモ、マガモ、ヒドリガモ、カルガモ、キンクロハジロ、カイツブリ、カンムリカイツブリなどがスコープ越しに見える。遠くの浅瀬にはウミウの群、その横には4羽のコハクチョウが羽繕いを繰り返している。オオバンの群も遠くにかたまっている。

 サンクチュアリーの背景には大山があるが、この素晴らしいシチュエーションを台無しにしているのが湖岸のゴルフ練習場のネットとラジオ電波塔。せっかくの景観なのにもったいないことだ。センター学芸員の神谷さんに案内されて館内を回る。ホールでシベリアでの渡り鳥の繁殖シーンの映像を見たあと、パワーポイントによるプレゼンテーションを受けた。一番興味深かった話は、米子水鳥公園のコハクチョウが1日で日本海を横断してウラジオストクまで飛行するという記録。発信機を着けての追跡調査は説得力があった。

ネイチャーセンターから見る大山  プレゼンの後は意見交換会。冬季湛水水田の重要性と、豊岡盆地でも条件さえ整えてやれば多くの水鳥の越冬が期待できるとの希望を貰った。郷公園に居候中の野生コウノトリは、1年前にはこの水鳥公園をねぐらにしながら数ヶ月を過ごしたのだ。「ウチのコウノトリ、豊岡では元気にしてますか?」という神谷さんの言葉が印象に残る。水鳥公園で暮らしたコウノトリが今、郷公園で暮らしている。この偶然性が「偶然」で終わること無く、「必然」であったという確信を我々は持ちたい。そして、中海や宍道湖が水鳥のサンクチュアリーとなった必然を、ぜひ豊岡盆地でも実証させたいものである。野生コウノトリは、そのための使者であると信じよう。

赤いくちばしが印象的なツクシガモ  神谷さんが指差した先には、初めてみる2羽のツクシガモがゆっくり泳いでいた。赤いくちばしと白い腹が目立つ大型のカモ。九州の筑紫地方に名前の由来を持つ通り、山陰地方ではめったに見かけないカモだ。16時半も回ったところで、鳴海食料班長の気持ちはすでに水鳥公園にあらず。大槻号で食料調達斑は先に公園を後にした。残ったのは私、上田、浜田、谷上の4名。中海の山際に陽が落ち、安来の水田で一日を過ごしたコハクチョウの帰還を防波堤の上で待ちうけた。ポツリ・ポツリと数羽の群が帰って来ては、頭上を低空飛行して着水する様は美しい。しかし寒さに耐えかねて、大群が帰還する場面までは居ることが出来なかった。駐車場に向いながら薄暗い道を歩けば、コハクチョウの群が次々に着水する音や、コォーコォーと鳴き交わす声が聞えた。18時、すっかり暮れた駐車場を後にする。

 ちなみに、神谷さんによれば、朝は8時ごろから一斉に餌場に向って飛び立つとのこと。現在約1000羽のコハクチョウが水鳥公園をねぐらにしており、朝の飛び立ちの風景を見てみたい気持ちにかられたが、これは今回実現することは無かった。

<引用終了>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 5時前に水鳥公園ネイチャーセンターを後にしたが、4人ほどがなかなか出てこない。やがて鳴海氏の携帯が鳴り、「わしらはもう少しここで鳥の観察をする。今からコハクチョウが戻ってくるから、これからがええとこなんや。あんたら、先にバンガローへ行って飯の準備しといてくれ。」とのお言葉であった。菅村、大槻、鳴海、稲葉の正直な4名は、一足早く日吉津村海浜運動公園へ行き、管理人のおじさんにバンガローを開けてもらい、ジャスコへ買出しに行き、粛々と飯の準備をしたのであった。

 今回の視察研修でどこに泊まるかと言うのはひとつの課題であった。皆生温泉に泊まり、ぱあーとやるか、米子のシティホテルに泊まり街に繰り出して、ぱあーとやるか、かなり検討されたが、結局寝袋を持っていって、バンガローということになったのだ。日吉津村は米子市に隣接し、日野川をはさんで皆生温泉の隣、人口3千人ほどで、面積が400ヘクタール程度の非常に小さな村である。合併もせず何でこんな小さい村なのか、あくる日の朝に管理人のおっちゃんに聞いてた王子製紙の工場があり、税収の7割方はそこからはいてくるらしく、要するに王子製紙のおかげで豊かな村だから何も合併する必要がなかったのであろう。さすがに平成の大合併の話は出ているようで、今日も説明会があるのだとか。

贅を尽くした水炊き鍋  さて、鳴海食糧局長の采配で、境港で揚げられる海産物、寿司、酒などを買い込んで、鍋や包丁類を車に積んでいるにもかかわらずハクチョウに呆けている別働隊の到着を待った。ようやく鍋や包丁が到着すると速やかに宴の準備が進み、ややなし崩し的に、いかにも市民研究所らしい宴会が始まった。これではいつもとおんなじやないかと思いながらも、本日の食材は非常に高級である。てっさ、ウニ、アンコウ、ハマグリ、赤貝、ズワイガニ、タラバガニ、ブリ刺身、しゃぶしゃぶ用牛豚、しめ鯖、寿司、、、、酒類もエビス、スーパードライ、大吟醸、高級冷酒、、、単価の高いものが中心で、なかなかええやないかと思いつつ、我々は夕食を楽しんだ。7時40分ごろ、お客があり、鳴海局長が出迎え、中へ引き入れてきた。それは若いお兄ちゃんだったのだが、僕は何でお兄ちゃんが入ってくるのか理解できなかった。「こんにちは、なかなかみんなの顔や名前が覚えられなくて…」などとおにいちゃんはいうし、鳴海局長は「まあ、はいりんせえ… そうか、あんたか…」などと意味不明のことを言っている。やがてお兄ちゃんは隣のバンガローと間違えたことに気付いたらしく、ニコニコと退散していった。その光景をうまく表現できないのが非常に残念であるが、僕はもう腹を抱えて笑いすぎて、あのぐらい笑いこけたのは久しぶりであった。鳴海局長の高度なギャグにはまったく感心する。

 やがて鳴海さんの知り合いのお二人を迎え、今後の市民研究所のあり方、コウノトリの野生復帰の進め方などを熱く語りながら、時には、谷上さんから生体におけるチタン効果の体験実習の指導を受けたりしながら、有意義な懇親会をスレンダーでアクセスに過ごしたのだ。このあたり、僕は酔っ払っていて良く覚えていないので、必要があれば他の参加者に詳しく聞いてほしい。

 1月26日(日)

朝のバンガロー合宿風景  さわやかな朝を迎え、朝日を肩にした雪の大山が美しい。昨日の出汁が良く聞いた味噌汁を飲む。鳴海食糧局長の会心の作のひとつであろう。てきぱきと撤収作業が進み瞬く間に出動の用意ができた。皆さん今日も快調のようであるが、僕はどうも風邪の具合か二日酔いか良く解らないのだが非常に体がだるい。9時前に管理人のおじさんの出勤を待ち、後片付けの検査を受け、我々はバンガローを出発した。

 米子道に乗り、溝口インターを経て「とっとり花回廊」へ。山を開発して、中央に設置された大規模な温室、円形に園内を周遊する屋根付の廊下(これがあるので回廊と名づけているようだ)、回廊沿いの東西南北4箇所に設置された展示室やレストラン、土産物屋、これら全体を包むように整備された庭園(雪に埋もれてほとんど花は見られなかったが)。この施設とアクセス道路の整備などでおそらく数百億の事業であったろう、まさしく20世紀末の典型的なテーマパーク公共事業という感じだ。都合の良い来場者予測で整備し、現在は予定通りの客が来ず、県か公園協会か知らないが、しんどい運営を余儀なくされているのではないだろうか。

花回廊フラワードームと大山  9時半ぐらいに我々8人は到着したが、駐車場に車はほとんどなく、園内の入場者もこの時間ではほとんどいない。駐車場の誘導ガードマン、入場ゲートのお姉さん、みんなとても気持ちのいい応接で、会場内も広々と快適であった。また機会があれば行ってもいいかなあという気にさせる応接だ。頑張っていただきたい。植物園の植物については誰もそれほど興味はないのであるが、視察研修でこういうところを訪れるのは楽しい。何か、遠足に来たような感じだ。ここでは大山の素晴らしい姿を見ることができた。美しく雪を纏う、堂々たる伯耆富士。西側から眺める大山の姿は本当に美しい。米子を中心としたこの地方は、どこからでも大山の姿が見える。ここで暮らす人々はいつも大山と一緒なのだろう。残念ながら豊岡にはこのような名峰がない。神武山、来日山、三開山ではやはり役不足だ。

花回廊から見る大山は伯耆富士の名にふさわしい  10時過ぎに北館のレストランで地ビールを飲む。さっぱりとしていて美味しく、少し元気が出てきた。市役所の佐竹課長から携帯が入る。奥様と蒜山まで来ていて、これから安来のハクチョウを見に行くらしく、我々も合流しないかとの打診らしい。佐竹課長の行動力と言うのはものすごいものがあって、昨年高知県へ行ったときも、帰りにちょっと米子に寄って帰るといった具合だ。市民研究所は、どちらかと言うと計画性を重視した組織だから、非常に魅力的な提案ではあったが、こういう突発的な提案は即座に却下された。そして予定通り我々は、11時から行われる猪鍋の無料配布を受けるべく西館へと向かったのだ。猪鍋は猪肉はほとんど入っていないのであるが、いい出汁が出て本当に美味しかった。市民研究所の鍋は肉がふんだんに入りすぎているので、このような上品な美味しさにはならないのではなかろうかとの意見が複数から出された。やはり、視察研修に出てよその大鍋を食べてみるというのも重要なことである。思い思いに土産などを買い、花回廊を後にした。

無料で振る舞われる猪鍋で暖まる  最終目的地の冬季湛水水田を目指し、東へと向かう。途中、東伯農協のステーキハウスで本格和牛ステーキを食そうということになり、僕は10年以上前の記憶を手繰りながらもうこの辺かと思うときに、高橋車から「ふろしきまんじゅう」を食うので饅頭店に来るように」との携帯が入る。どうもこの「ふろしきまんじゅう」と言うのは、鳥取県に来たら必ずお土産に買って帰らなければならないほど重要なものであるらしい。別に風呂敷のような形はしていない。黒砂糖味の皮に包まれた一口サイズのこの上品な饅頭は、価格的にも手ごろだし、確かにそれだけの評価を受けるのも納得できるものであった。

東伯プラッツでリッチなステーキランチ  饅頭店でステーキハウスの場所を確認し、それにもかかわらず一度場所を間違いながら、東伯プラッツというステーキ屋に入る。農協関係の店らしく、客あしらいは段取りが悪かったが、我々8人は他の客とは別個のパーティルームに案内されたのですぐに気分を良くした。ヒレは100gから50g刻み、サーロインは150gから50g刻み、+500円で和食セットか洋食セットが付く。一人用の鉄板で自分の好きなように焼いて食べるのだが、外側に色を付けて中がまだ冷たいようなレアから、焦げ目しっかりのウェルダンまで、一切れづつ思いのままだ。芸術的な本格和牛の美味しさはもちろん、選択肢の多いこのシステムは参加者一同から高い評価を受けていた。とくに高橋さんの評価は高く、機会があれば家族といっしょに再度訪れたいとのこと。本場但馬にもステーキハウスは各地にあり、できれば兵庫県産和牛の消費に貢献してほしいのであるが、残念ながら、客の満足度が非常に高いこのシステムに匹敵する店を僕は知らない。僕はサーロイン150gの和食セットを頂いたが、さすがこの年になると3年以上肥育されたサーロインの脂肪分に後半やや閉口した。さすがは鳴海食糧局長、何のためらいもなくヒレの200gを選択していた。食体験が豊富なのだろう。ここでも地ビールを飲んだが、世界のビールコンテストで銀賞を取ったとか書いてある。僕はビールの味などわからないが、少し酵母の香りや濁りが残っている美味しいビールであった。  

 少し遅いリッチな昼食を終えて、2時過ぎに東伯町を出発。最終で最大の目的地といえる冬季湛水水田へ向かった。一つ目の冬季湛水水田では約80羽のコハクチョウを見ることができ、たいへん良いものを見せてもらったと思う。これについても、高橋研究員のレポートを引用させていただく。  

<引用開始>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

【冬季湛水水田】

気高町日光地区の冬季湛水水田の風景  湛水(たんすい)とは、水を張るという意味である。今回の視察旅行までは灌水(かんすい)だと私は思っていた。改めて辞書を引けば、灌水とは農作物に水をやるという意味だった。日本語は難しい。漢字も紛らわしい。冬の水田に水を張ることで、水鳥たちの餌場とねぐらを提供しようというのが、冬季湛水水田の大きな目的だ。

 従来の稲作のスタイルを変えるこの動きに対し、コウノトリ市民研究所でも休耕田を利用した田んぼビオトープという形で検証中である。全国のあちこちで冬季湛水の試みも進んでいる。鳥取のR9沿いにその現場があり、視察団はそれを観察してこようというのである。言ってみれば今回の視察旅行の最大目的がこれであり、もう旅も終わりが近いのだが、本来のメインイベントなのだった。

コハクチョウの家族とコガモの飛翔  米子水鳥公園の神谷さんから教えられた湛水水田は、小さな谷の水田がすべて水で覆われた静かな一画であった。水田の中央に太い用水路があり、その先の水門が閉じられている。水門の向こうは海が近い。つまり、冬の田んぼに塩水が逆流しないようにと水門を閉じた結果、あふれた水が自然な形で水田を覆ったものである。昔からずっとこういう状態の冬の田んぼであった訳だ。今改めて冬季湛水水田が叫ばれる中、ここではまったく自然に長く続いている光景に過ぎない。

 80羽ほどのコハクチョウが、家族単位で集まって餌を食べたり羽繕いしたりしている。美しい風景だ。コガモ、ヒドリガモ、マガモなど、カモ類の姿も多い。双眼鏡で観察すると、ちょっと珍しいハシビロガモも見つけた。北にR9、南にJR山陰線に挟まれた一画であったが、車や時々通過する列車に驚く様子もなく水鳥たちは静かに暮らしている様子。彼らの脅威は、こうして唐突に登場する物見高い観察者の姿だろう。

鳥取市小沢見地区の湛水水田、車の背景が国道9号線  ここからR9を少し東に進んだところで、もう一ヶ所の湛水水田を観察した。昨日米子に向かうときに車窓から確認していた場所だ。R9から農道に入る際、左前輪を脱輪。そのまま駆動をかけてうまく脱出したが、車幅一杯の農道を綱渡り状態で進んだ。後続の大槻車も同じ場所で脱輪したがことなきを得た。こちらの湛水規模は小さなもので、一羽の水鳥も確認できなかった。白い羽根が落ちていたので、夜はコハクチョウのねぐらになっている可能性もある。ここの湛水も、先の水田と同じ事情だろう。すぐそこに海がある。

 昔から、意図せず冬には水没してしまう田んぼがあった。そんな環境を好んで水鳥たちがやって来た。圃場整備が進む中でこのような田圃は次第に姿を消し、人は水鳥の環境を潰してきた。今、整備の進んだ田圃に再び水を張ることが、農家の人たちにとって容認できることなのだろうか。「環境」という印籠は、農家と農家を包含する地域への利益還元という形で渡されなければならない。試行錯誤の中、新しい農業のあり方が模索されている。

<引用終了>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 3時半ごろ、最終目的の冬季湛水水田で予想以上の成果というか情報を得て、たいへん満足した我々は、何も思い残すことはなく帰路へと就いた。鳥取からスキー帰りの混雑を避け海沿いのR178に入る。東浜では昔は集落内を国道が通っていたが、いつの間にかバイパスができている。高校、大学と3回訪れた事のある東浜の海岸を懐かしく見下ろしながら、県境の難所を通過し、居組、諸寄、浜坂と、ここまでくれば帰ってきたなあという感じ。余部鉄橋の下で小休止し、森本のトンネルでは鳴海さんが力説していたにもかかわらず携帯が繋がらないことを確認し、予定より1時間半遅れの5時半にコウノトリの郷公園に無事帰還。荷物を片付け、永田さんに美味しいコーヒーを入れていただき、「来年はシベリアに行こう」などと言いながら、我々の視察研修は終了した。

 今回の視察研修は、市民研究所としては昨年に引き続き2回目。水鳥公園や、冬季湛水水田を視察したことは、コウノトリの野生復帰を市民の立場から支援するコウノトリ市民研究所にとって、活動の今後に直結する内容であった。また、参加者の親睦を深めるとともに、対応していただいた米子水鳥公園の神谷さんや日吉津村海浜運動公園で出会った地元の方々との交流、地域の食文化の体験等、非常に意義深いものであった。

 また、今回の視察研修はサントリー世界愛鳥基金から旅費の助成を得て実現した。
サントリー世界愛鳥基金に対しこの場を借りて心からお礼申し上げます。

終わり

(文責:稲葉一明/構成:高橋 信)