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高知県視察研修

(文・写真 コウノトリ市民研究所研究員 稲葉一明)



四万十川の風景

 平成14年2月23日(土)〜25日(月)

  参加者  コウノピア  佐竹、佐田
          市民研究所  上田、菅村、稲葉

  目的   四万十川、仁淀川調査
         中村市のトンボ公園の取組
         須崎市のカワウソの取組
         高知の食文化、市場調査
         (コウノピア組は米子のコウノトリ、善通寺を含む)

行程、日程
2月23日(土)  6:00豊岡発
        11:00南国PA
        13:00土佐市うどんや
        14:30喫茶店
        16:00中村市トンボ公園
        18:50中村市ホテル
           夕食  四万十川料理
2月24日(日)  7:30ホテル発
                     四万十川調査
        10:30
           中村市内調査
        13:30昼食ラーメン
        15:00須崎市
        17:00
        18:50高知市内ホテル
           夕食土佐料理
2月25日(月) 7:30ホテル発
           仁淀川調査
        10:15
        11:00南国PA
        12:30鴻池PA昼食
        15:00養父道の駅
        16:00豊岡着

 2月23日(土)

上田さん宅へ朝6時に行き、フォレスターに乗り込む。菅村さん宅、国府駅で佐竹 館長・佐田さん組と合流。和田山から播但道、朝来PAでざっと打合せをし、ここか ら僕が運転。山陽道に入り、吉備PAで休憩、瀬戸大橋を経て四国へ突入。11時頃 に南国インターへ。高速道路を走ると高知県は思いのほか近い。高速道路では、佐竹 館長の運転には目を見張るものがあったが詳細についてはここでは触れない。 南国PAでは、付近の里山が照葉樹林と竹やぶで、但馬の落葉樹を主体とした景色 とだいぶ違う。さっそく菅村さんの解説をみんなで聴いた。 上田さんに運転を交代。高知市伊野インターで高速は終わり。高速道路のありがた さを痛感し、住民としては高速は特にいらないが、よそから来る人にとってはやはり ありがたいものだと感じられずにはおれない。高速を降りて、ここは土佐市内か、ク ジラの大きなモニュメントを発見し、クジラ料理の昼食を取るべく入る。黒潮遊園地? なる施設であるが、ほとんど閉鎖状態で、子供たちが200円で遊べるフワフワだけ がにぎわいを見せている。レストランも閉鎖しており、我々は止むを得ず隣のうどん 屋へ入った。 やや不満足な昼食を済ませ、国道56号線をひたすら中村へ向かう。ここからが遠 かった。早く中村まで高速道路をつけて欲しい。仁淀川を越え、須崎市から中土佐町、 佐賀町、カワウソやらクジラの看板が目に付く。途中でひなびた喫茶店で一服。突然 休憩を取るのが佐竹流だ。中村まであと1時間は掛からないらしい。まだ須崎市だろ うか。海沿いを走るのかと思っていたら結構山の中が多い。 1時間ほどで、ようやく中村市へ。あこがれの四万十川を渡る。市内で佐竹車は、 トンボ公園の場所確認のために、地元女子中学生に道を聞く。佐田さんの問い掛けに 答える中学生が、サングラスをかけた佐竹館長を見て、思わず引いている風景が面白 い。 予定より1時間ほど遅れて4時頃にトンボ公園に到着。社団法人トンボと自然を考 える会、杉村さんに案内していただく。トンボ公園は簡単に言うと10ha程度の大き な谷の耕作放棄された田んぼを買い取ったり借りたりして、ボランティアなどにより 撹乱整備しビオトープにして、さまざまなトンボや生き物を発生させている。その横 に中村市が建てて杉村さんたちが管理を受託している入館料の必要な展示施設がある。

トンボ自然公園。耕作放棄田をビオトープに再生
杉村さんはトンボの大家で、ビオトープの水の状態をいろいろ調節して、発生する トンボの種類などを操っている。トラストやボランティア、地元農家との調整など、 おそらくなかなか聞けないであろう話をたくさん聞くことが出来た。だからここには 詳しくは書けない。しかし杉村さんのパワーと情熱には驚く。谷の隅から隅までを歩 き、さらに施設の中ではトンボを中心に、世界の昆虫相と民族性の関連に関する考察 のお話を聞く。なかなか興味深い。展示されている写真コンテストには豊岡など但馬 からの出展も複数有り驚く。湯村温泉の荒湯近くでヤンマが卵を産み落とす瞬間を捉 えた写真に一同感動。今年は湛水魚の水族館もオープンする予定で、まだ準備中であ るがいろいろな淡水魚も見学できた。琵琶湖博物館と十分勝負できる内容ではないか な。当たり前の話だが、コウノピアの展示は完全に負けている。 すっかり暗くなるまでお邪魔し、中村市街地の端に位置するビジネスホテルへ7時 前に到着。すぐにタクシーで夕食を食べに行く。タクシーの運ちゃんにお勧め店を聞 くと、「味劇場」なる店を教えてもらう。そこでは郷公園の池田先生お勧めの「ぬく い寿司」なるものも賞味出きるらしい。しかし味劇場はあいにくの満席で、次候補で ある杉村さんお勧めの四万十川料理店へ向かう。タクシー会社は「安全タクシー」と いって、驚くべき安全運転をする。時速30キロ以上は出さない主義のようだ。 テナガエビの煮物、テナガエビの空揚げ、カワノリの天ぷら、カツオの叩き、ゴリ の佃煮、生ビール等を注文。かつおの叩きの切り方が豪快である。付け合せのにんに くとたまねぎがうまい。ゴリの佃煮が初めて食べたが、なかなか良かった。テナガエ ビもうまいが、円山川のものとなんら変わらないと言うのが正直な感想である。ぬく い寿司を食べることが出来なかったのは残念である。おいしい四万十川料理を食べな がら、コウノトリの野性復帰について激しく語りあったのであるが、ここには書かな い。

テナガエビの空揚げ。円山川のテナガエビと味は変わりません
ホテルへは歩いて戻った。気持ちのよいホテルであったが、個室に風呂がなかった。 そのかわり大浴場があって、そこから眺める景色はまずまずであった。
 2月24日(日)

7時起床。朝食のサワラの焼きものは大変おいしかった。今回の旅行で一番おいし かったのはこれだ。他のがそれほどおいしくなかったということではない。太平洋の 海辺の街のビジネスホテルの朝食に出てくるサワラの焼き物が、脂が乗っていてとて もおいしかったということである。  7時半に四万十川調査へ向かう。前日聞いていたナベヅルを探し、下流方面へ。ナ ベヅルを見つけることは出来なかったが、カワノリの養殖や、ウナギ集荷場なるもの や、たくさんの川漁師の小舟、まさしく四万十川であった。

四万十川
巨大な農道橋や水路整備、道路整備の進む農村風景も見みながら、今度は中流域の 沈下橋を見に行く。四万十川右岸道路は非常に狭く、また、所々にある独立単在民家 に驚く。昔はわずかな田畑と四万十川のめぐみで、十分な自給自足が出来ていたのだ ろうなあという感じ。南国らしく柑橘園も多い。 最初の沈下橋に付く。増水時には水の中に沈んでしまう橋で、車は通れるが、低く 欄干もない。水はきれいで、さっそく河原におりて水中の石をひっくり返してみると、 カワゲラ、トビゲラ、ヘビトンボの幼虫がものすごい高い密度でいる。四万十川の水 質の良さと豊かさの証明だろう。

マゴタロウ(ヘビトンボの幼虫)四万十川には清流に棲む水生昆虫がいっぱい
すぐ上流に土産物屋と屋形船の船着き場が見えるのでそこへ移動。川魚料理のため か、やたらと猫が多い。時間がないので船には乗らず、土産を見る。僕は思わずウナ ギもんどりを買ってしまった。そのもんどりには「四万十川」と書いてあるのだ。こ れでぜひ円山川のうなぎを捕まえたい。

四万十川屋形船の船着場から沈下橋を望む
10時になり、佐竹車は須崎市のカワウソフォーラムへ向かう。どうも今回の主目 的はカワウソフォーラムで佐竹館長が講演をすることであるらしいことが判明する。 我々は川調査が主目的なので、もう少し上流の沈下橋へ向かう。そこでは、上田、菅 村両氏は石拾いに余念が無い。僕はそれほどでもないけど河原の石は面白いのだ。砂 岩、花こう岩、蛇紋岩、赤いの緑の白いのとまことにさまざまだ。下りは右岸から最 初の沈下橋で左岸へ渡り、四万十川の風景を楽しみながら中村市街地へと向かった。

中村市の商店街。地元の出店者がいっぱい
市街地での目的は市場調査である。中心部のスーパーに入り、農林水産物を見る。 地場野菜が安いという印象。ダイコン80円。ミズナ30円。貝、魚、のり、見慣れ ない地場産物が豊富だ。1パック128円の生のアオサノリを2パック買う。次にア ーケードのある中心商店街へ。ちょうど日曜日なので青空市場の出店が多数。ここの ダイコンは50円でさらに安い。モクズガニも売っている。1キロ1,000円。こ れは安い。普通1匹400円とかが普通。おばちゃんと話をしながら、手に取ってみ てみるが、甲幅5,6センチの中型で雌は抱卵しているものもいる。ちょっと見だが フクロムシの付いているものはなかった。シシ肉が売っている。1キロぐらいのブロ ックが2,000円。これも安い。しし肉はキロ1万円してもおかしくない。3日前 に取れたやつだとおばちゃんが言う。もちろん生で、こういうものはなかなか手に入 らない。高知県の保健所はおおらかであるとも思った。海藻類を売っているおばちゃ ん。アオノリ、フノリ、アオサノリ、サクラノリ、、アオノリは乾燥品で、15グラ ムぐらいであろうか、100円と激安。土産物屋の5から3割りぐらいの値段であろ うか。3袋買う。菅村さんは10袋買っていた。生アオサノリも1パック100円、 さっきスーパーで買ったのは失敗だった。あと、フノリ、サクラノリも買う。1パッ ク(大きめ)300円。これは食べたことがないので非常に楽しみ。キャンプ用品を 積んでこなかったのが残念だ。食材を買って河原で食べれば素晴らしかったであろう と上田さんと悔しがる。豊岡でもこのようなバザール形式の市場が出来ないものかと 思う。大開通りを歩行者天国にして、毎日曜日はたくさんの露天を並べる。地元農林 水産物を中心に朝市を大々的に行なうのだ。中村市の取組を見るかぎり、地元商店街 自体の活気が出て、観光客にも好評だ。客足が遠のく豊岡市中心部の商店街も思いき ってやればいいと思う。

新鮮で安い。面白いものもいっぱい
さて、生物を買ってしまったが、家に帰るのは明日の夕方。これでは確実に鮮度が 落ちる。悩んでいると菅村さんが適切な指導をしてくれた。「さっき釣り屋があった からそこで保冷用品を買うべし」。発泡のボックスと氷を買い、800円ぐらいした かな?、我々はなんの憂いもなく次の行動へ移ることが出来た。 昼前になったが、須崎へ向かう途中で昼食をしようと国道56を北上する。燃料を 入れるが、非常に小さなGSで店の人が久しぶりの地元以外の客に驚いた様子。GS でクジラの宣伝を受けて、さらに飯屋を探しながら須崎へ。なかなかいい店が見つか らず、時間も経つのでクジラの見えそうな海岸沿いの兵庫物産?なるラーメン屋に入 る。僕はみそかつラーメンを食べた。どこにでもある味だが大変おいしかった。食っ てから海岸でクジラを探すが発見できず、仕方ないのでトンビを観察する。 3時に須崎へ到着。当然遅刻しており、佐竹館長と杉村さんの講演は聞くことが出 来なかった。杉村さんの話は前日聴いたものでほぼクリアーしており、佐竹館長の話 はいつも聴いている話だから大丈夫だと、佐田さんに教えてもらい安心する。我々は 後半のパネルディスカッションから参加。参加といっても聞いているだけである。須 崎のカワウソ運動は我々が市民運動を進めるうえでも非常に参考になると思う。難し いという点も含めて。詳しくはここには書かない。須崎の駐車場ではフキノトウの花 が咲いてすでにほうけている。種類はわからないが桜も満開。南国である。5時半頃 須崎を後に高知へ向かう。 高知市のど真ん中のホテルナンバー1というところに入る。ナンバー1であったが、 支払は現金でカードが使えなかった。こんなところで現金使う予定ではなかったのに。 しかし個室に風呂は付いていた。7時に高知県生態保護協会の中村さんと合流して奥 様?の運転で土佐料理店へ。生ビール、カツオの叩き、カツオの酢の物、テナガエビ の空揚げ、マグロ胃袋の酢の物、クジラの叩き、マグロの揚物?、、、 等を注文。 中村さんのお話をいろいろ聞きながら、大変おいしく頂く。ただしクジラの叩きは味 が抜けているような感じで本来の味がしない。日曜日の夜に客はとうとう我々のグル ープだけであった。
 2月25日(月)


仁淀川の河畔林
7時起床。朝食はバイキング。ここでは特にコメントはない。佐竹・佐田組は、仁 淀川を調査し、阿芸の阪神キャンプを見学し、馬路村で地域起こしを視察し、善通寺 で人と会いうどんを食べ、米子へ行ってコウノトリを見るて帰るという計画を考えて いる。とても付きあいきれないので、我々は仁淀川を見て明るいうちに帰るというコ ースを取った。

仁淀川の川原。石拾いに余念のない上田代表
朝通勤で込み合う高知市街地を路面電車と並びながら、西へ向かう。なかなか活気 のある面白そうな地方都市だなあと感じる。仁淀川は高知市内からすぐ近くだ。広大 な河川敷内へ車を入れ、農地の中を通り河畔林を抜け河原へ車を付ける。広々とした 丸石河原。国道56号の橋を車がひっきりなしに通っているのが下流側に見える。場 所にもよるのだろうが水生昆虫類はあまり見当たらなかった。ここでも上田菅村両氏 は石拾いに余念が無い。僕は木で組んだものを見つけそこへ行ってみると、切り干し ダイコンが干してあった。千切りのタイプだ。さらに上流の河原に青いネットが敷い てある。それは輪切りタイプの切り干しダイコン。気持ちのいい河原を後に今度は河 畔林へ。菅村さんの植物の話を聞きながら、河畔林の規模の大きさに見とれる。最後 に堤防の斜面で角切りタイプの千切りダイコンが干してあるのを発見。南国らしい河 原の利用。川漁師の船もじかに触って見学。10時10分ごろ、仁淀川を後に帰路と ついた。

切干大根。これは千切り型
帰りも高速は僕が運転。瀬戸を眺めながら昼食を取ろうと鴻池PAで休憩。ここで のコメントは全くない。雑談しながら一気に養父の道の駅に3時半頃到着。円山川の 風景を見て、四万十川、仁淀川に比べ非常に貧相なことに気がつく。日高町辺りから 多少面目を回復してきたが、やはり河川敷は小さく、河原がほとんど無い。上郷の河 畔林の景色も良いが、規模が小さい。円山川は素晴らしい川だが、四万十、仁淀を見 たことによって、円山川というものがまた違う見方ができるようになったような気が する。菅村邸、上田邸を経由して4時過ぎに我が家へ到着。 家では、アオサノリ、フノリ、サクラノリをそれぞれ湯がいて、酢醤油、マヨネー ズで頂く。それぞれ潮の香りがほのかにする。素材としてはサクラノリが気に入った。 思ったよりも大量にあるので、3種ののりを一緒にして佃煮にした。これが思いのほ かおいしく出来上がり、大満足であった。水洗いをしすぎないことがポイントではな いかと思う。

中村市で買った桜のりを湯がきました
カワノリの乾物は、おばちゃんは火であぶって、もんでとか言っていたが、そんな ことせずそのまま食べるので十分おいしい。日本海のイワノリの干したのもそのまま 食べておいしいが、またそれとは違うおいしさである。  後で聞いた話だが、佐竹・佐田組は善通寺で人と会い、うどんをたくさん食べて、 その後米子へ向かいコウノトリを十分に観察し夜10時半に豊岡に帰還したそうであ る。 以上、大変有意義な視察旅行であった。四万十川、仁淀川にはまた行きたい。今回 は歴史関係を見る間がなかった。中村、須崎、高知など各地方都市をゆっくり見てみ たいものだ。また、市民研究所で年に一度視察研修を行えば面白いのではとも思う。                                    (完)


【追 記】

 文中四万十川、仁淀川のすばらしさに比較し円山川が非常に劣っているという印象
を書いているが、こと仁淀川の河畔林?については、菅村さんより以下のコメントが
ついているので掲載します。やっぱり円山川もすばらしいのだ。


 あれは河畔林というよりも竹でできた水防林であると私は考えます。河畔林として
は質的には非常に劣ります。円山川のものの方がはるかに質が高いです。長さは立派
ですが幅もそれほどではなく河畔林と呼ぶのはちょっと抵抗があります。(菅村定昌)