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イチョウウキゴケ  No.73




 イチョウウキゴケは、その名の通りイチョウの葉のような形をした
ウキゴケ科の苔である。大きさは、長さが1〜1.5cm、幅が4〜8mm。
表面はつやつやしていて光る。表は緑色だが、赤紫色を帯びることが
多い。裏側には紫色の鱗片が密生するが、地上に生えている時は、裏
側の紫色の鱗片はなくなる。似た種類はなくまず間違えない。
 
 日本だけでなく全世界に生育する。池や水田などの水面が主な生育
場所だが、湿った土の上にも生える。
 
 10年ほど前に大雨が降り、出石川にかかっている五条大橋の上流
部右岸の高水敷きの植物が流されてしまい、一面が泥だらけになった
時があった。しばらくしてその泥の上を大量のイチョウウキゴケがお
おったのを覚えている。イチョウウキゴケは今でも、円山川の川岸の
泥の中にはしばしば見られる。また、秋から冬にかけて稲刈りの終わ
った水田の土の上にもしばしば見られる。
 
 兵庫県立人と自然の博物館では「ひとはくリサーチプロジェクト」
という名で身近な自然環境の様子を調査するプロジェクトを行ってい
る。詳しくは下に示すホームページを見てほしい。
 
http://info.hitohaku.jp/research/RP_top.htm
 
 博物館に集まった情報は、地図に書き込まれて、博物館の展示やホ
ームページで公開される。
 
 イチョウウキゴケは、このプロジェクトの対象種である。
 
 イチョウウキゴケは、環境省のレッドデータブックでは、絶滅危惧I
類(CR+EN)というかなり絶滅の危険度の高いランクになっている。お
隣の京都府でもイチョウウキゴケは絶滅危惧種にされている。京都の
イチョウウキゴケは、除草剤や農薬の使用による水質汚染や水の富栄
養化、水田などの農地の整備で減ったのではないかといわれている。
イチョウウキゴケは、山口県など多くの府県で絶滅危惧種になってい
る。
 
 はじめに書いたように、イチョウウキゴケは、世界中に広く生育す
る植物である。このように広い範囲で生きていくことができる種類が
急速に姿を消しているということは、日本の植物相に何か大変なこと
が起きているのではと危惧させる現象である。
 
 幸いこのイチョウウキゴケは、兵庫県には多いようで、兵庫県版の
レッドデータブックには載っていない。但馬でも、多くの場所で見る
ことができるが、確かにどこででも見られるような種類ではなくなっ
てきている。
 
 今、どこにどのようにこのイチョウウキゴケがあるのかを記録して
おくことは、これからこの植物がたどる道を記録することになる。兵
庫県でも他の府県と同じように減少してきているのは間違いないので、
詳しい記録を取っておくことで、イチョウウキゴケに代表される水辺
の植物を救う時の方策が立てやすくなる。ぜひとも調査に参加してほ
しい。
 
 当たり前のものを当たり前として記録しておくことは、当たり前が
故に難しい。当たり前のものが当たり前でなくなった時に私たちはあ
わてるが、実は、それではもう手遅れなのかもしれないのである。当
たり前のものが当たり前にある幸せを私たちはもっとかみしめないと
いけないのだろう。


at: 2004/05/11(Tue)




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