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ハヤブサ  No.27




試練の冬乗り越える
  ハヤブサ(タカ目ハヤブサ科)

 ハヤブサというタカの名を、たいていの方ならご存知
だろう。漢字で書くと隼。男性の名前にこの字が使われ
ることも多い。速翼(ハヤツバサ)が転じてハヤブサと
なったといわれるように、時に新幹線並みの猛スピード
で獲物を追いかけて空中で蹴り落す。ハヤブサの餌とな
るのは主に小鳥だが、繁殖期には育ち盛りのヒナのため
の大きな鳥も狩ってくる。自分より大きなコサギをヒナ
に与えていたのを目撃したときはさすがに驚いた。

 ハヤブサの繁殖場所は断崖絶壁の岩棚。人や他の動物
が容易に近づくことができない場所を選ぶ。但馬では海
岸線の断崖にいくつかのハヤブサの営巣地がある。兵庫
県レッドデータBランク指定。個体数の少ないハヤブサ
の繁殖は決して安定したものではない。人間の与えるス
トレスが繁殖の妨げとなる事例が多いので、繁殖期の営
巣観察には細心の注意が必要である。

 その一方で、都会に順応するハヤブサが現われてきた。
元々は都市近郊の山の断崖で暮らしていたグループが、
その生活場所を追われた結果と言えるだろう。高いビル
の屋上や鉄塔のテラスで繁殖を行う。野鳥にとって都会
暮らしはさぞ辛いだろうと思うのが自然だが、どうやら
それは的外れのようだ。公園や路上を我が物顔で闊歩す
るドバトこそ、都会派ハヤブサにとって格好の餌食。人
が餌をまいて育ててくれるドバトを、ハヤブサはいとも
簡単に頂戴することができるというわけだ。

 さて普段は海岸で暮らすこのあたりのハヤブサたちも、
冬になると餌を求めて豊岡盆地に入ってくる。バードウォッ
チャーにとって冬の六方田んぼの風物詩ともいえるのが、
電柱の上に止まるハヤブサの姿。頭に雪を積もらせなが
ら、じっと餌の来るのを待っている姿はいじらしくもあ
る。そんなハヤブサの姿を今冬はほとんど見かけること
がない。

 今なお一面の泥に覆われた六方や小坂の水田を見るに
つけ心が痛む。大洪水の影響は野生生物にも及んでいる。
食物連鎖の底辺層の生き物を無くした田んぼでは、その
上位の生き物の暮らしを奪うことになった。小坂地区で
ようやく出くわした若いハヤブサ。人を寄せ付けないい
つもの気高さは無く、すがるような目で私を見ながら翼
をひるがえした。ハヤブサにとっても試練の冬が、もう
すぐ過ぎ去ろうとしている。

文と写真 NPO法人コウノトリ市民研究所・高橋 信
※2005年2月27日掲載




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