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シュレーゲルアオガエル  No.24




たくましい踏ん張りに脱帽
 シュレーゲルアオガエル(カエル目アオガエル科) 

 空は曇天。今にも雨が降り出しそうだ。水田の稲はちょうど僕の
膝辺りの高さまで伸びてきている。カエルたちの鳴き声が不規則な
旋律となって響いている。求愛の季節だ。どんなカエルがいるのだ
ろう。僕は畦をそっと歩き始めた。実は、僕にはある目的があった。
シュレーゲルアオガエルの孵化直後のオタマジャクシを、実際にこ
の目で見てみたかったのだ。

 このカエルは、春から夏にかけて水田の畦に穴を掘り、そこにこ
ぶし大くらいの白い泡状の卵塊を産み付ける。その中には多くて600
個以上もの卵が含まれているという。しかし、孵化したオタマジャ
クシは、土の中からどうやって水中にたどり着くのだろう。まさか
穴を掘ることは無理だろう。何とオタマジャクシは、雨水と一緒に
泡に包まれながら水中に流れ出るらしいのだ。白い泡は、卵を乾燥
から守るだけでなく、孵化したオタマジャクシの土からの脱出を助
けているのだ。水田環境に見事に適応した生態。僕はそんな彼らの
ワンダーランドを何としても見てみたかった。

 その卵塊はもうすぐ目の前にある。オタマジャクシの脱出に出会
えるかな…。期待が僕の足をさらに前に進める。しかし、その直後、
僕の両足は止まってしまった。僕の足元に突然、シュレーゲルアオ
ガエルが現れたのだ。見ると、メスの背中にはオスがしがみついて
いる。抱接したままのそのつがいは、まさに僕が前に進むのを拒ま
んとしているかのようだ。メスは、大きな足にひるむこともなく、
黄色い大きな眼で僕をじっと見ている。

 「私達、これから卵を産みに行くの。畦が荒らされると困るの。
そっとしておいて。」 

 オスはただただ必死にしがみついている。何とも滑稽な姿。僕は
彼らの愛嬌のある風貌とたくましい踏ん張りに、完全に負けてしまっ
た。「そうかあ。分かったよ…。」

 水田の畦は、カエルたちにとって不可欠なビオトープ空間だった。
但馬地方では、減反などによって水田が減少し、多くの動植物たち
が生息する畦環境が悪化してきている。ひとつがいのカエルが、僕
たちに畦の大切さを教えてくれたような気がした。

文と写真 竹田 正義
※2004年12月26日掲載




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