但馬のキノコ 一覧

ムネアカオオアリ


ムネアカオオアリ  ハチ目アリ科オオアリ属
Camponotus obscuripes
胸赤大蟻

森林内で地面や樹幹を観察すると、いろいろなアリがいることに気づく。大きいのや小さいの、いろいろいる。中でも大きくてスマートで赤い存在感のあるやつがいる。

ムネアカオオアリ。クロオオアリと並んで日本最大級のアリで。胸部と腹部の一部が赤褐色なのでよく目立つ。スマートで、胸部がシュッとしていて格好が良い。あごも立派で、目もかわいい。働きアリの体長は1センチを超える。

 このアリの巣は土中ではなく枯れ木に作られる。朽木にアリが営巣することは良くあると思うが、このムネアカオオアリはシロアリのように乾燥した木材にも穴を開け、住宅にも被害を発生させることが報告されている。
 ムネアカオオアリの天敵にトゲアリというのがいる。トゲアリの新女王アリがムネアカオオアリの巣に侵入して、そこの女王を殺して居座り、トゲアリの働きアリに自分の子どもを育てさせ、やがてムネアカオオアリは死滅してしまう。
 そういうこともあってか、ムネアカオオアリとトゲアリが同時に観察できる場合が多いように思う。

 ムネアカオオアリは、飼育しやすく、大きくて観察もしやすいので人気があり、生体つきの飼育セットが販売されていたりする。
 但馬では珍しい種ではない。


ムラサキアブラシメジモドキ


ムラサキアブラシメジモドキ(フウセンタケ科 フウセンタケ属Cortinarius salor Fr. )
(紫油占地擬)
 紫色が美しいキノコである。水分があるときはヌメリが強く光沢が強いので、特に若くて紫色の強いものは宝石のように美しい。
 フウセンタケ属のキノコは味に癖なく美味菌である。ムラサキアブラシメジモドキはヌメリが強いので、おろし和えや、汁、鍋に入れたり、ナメコと同様に利用すると良い。
 

 カサは饅頭型から平らへ開いていく。カサと柄の間にはクモ糸状の膜でつながり、やがて不完全なツバとして柄に残る。これはフウセンタケの仲間の共通点である。このツバは、若いときは白色であるが、やがて自分の胞子が付着して茶色に変化する。それが柄の模様のように見える。
 「モドキ」という名がついているが、「ムラサキアブラシメジ」と和名のついたキノコは図鑑では見当たらない。
 秋に広葉樹林内の地上に発生する。里山のキノコである。


ヒメベニテングタケ


ヒメベニテングタケ(テングタケ科 テングタケ属Amanita rubrovolvata Imai)
(姫紅天狗茸)
 絵本によく出てくる赤地に白いぽつぽつが美しいキノコがある。これは概ねベニテングタケを描いている。ベニテングタケというキノコは、中部地方以北が分布の中心で兵庫県には基本的にない(他地域からの移入による発生の報告はある)。

 ヒメベニテングタケの名前の由来は「小さなベニテングタケ」ということである。確かにテングタケで、赤くて、タマゴタケではないとなると、ベニテングタケ?と一瞬思ってしまった。しかし、小型であるだけでなくベニテングタケとはかなり雰囲気が違う。カサや柄の根元に残るツボの破片は橙赤色であることが決定的に異なっている。

 ヒメベニテングタケ、夏から秋にかけてブナ林やミズナラ林などに発生する。小さくて可愛く美しいキノコである。

 写真は兎和野高原


クリタケ


クリタケ (ハラタケ目 モエギタケ、クリタケ属 Naematoloma sublateritium (Fr.)Karst.)栗茸
秋から初冬に広葉樹の倒木、切り株、土中の埋もれ木から群生。カサは茶褐色でクリの色のイメージに近いものが多い、名前の語源であろう。若いカサは繊維状の薄皮をほろほろとまとっているのも特徴だと思う。キノコらしい形。ツバ、ツボはない。

歯ごたえ良好味温和。市販のブナシメジのイメージにちかいと思う。あたればごっそり大量収穫できるのが良い。鍋でも油を使った料理でも用途は広い優良菌。
近年は、毒成分を含んでいるので毒菌に分類されている本もあるが、古くから食用とされている。
間違いやすい毒菌としてはニガクリタケがある。ただ、ニガクリタケは色合いがレモン色っぽいのとやや小さめで、噛めば苦いので見分けるのは難しくない。
秋のブナ林では、クリタケ、ナメコ、ムキタケの3種が主たるねらい目になるのでしょうか。
2011年11月23日 兎和野高原 


サナギタケ


サナギタケ
 (バッカクキン目、 バッカクキン科、冬虫夏草属Cordyceps militaris (Vuill.) Fr.)
蛹茸
 香美町村岡区の兎和野高原で、冬虫夏草を見つけた。ブナ、ミズナラ、スギなどの森で、腐葉土の地面から、オレンジ色の棍棒状のキノコが生えている。掘り返してみると大きな蛹からキノコが生えている。蛹はスズメガの仲間のトビイロスズメだと思われる。

 冬虫夏草、冬は虫なのに夏には草になるという意味、少し乱暴な表現である。ガやトンボなど昆虫類にキノコの菌糸が入り込み、やがて昆虫の体内で虫体を栄養源にはびこり、最終的には宿主(虫)を殺しキノコを発生させる。イモムシタケ、トンボタケ、セミタケ、、いろいろな種類がある。今回見つけたのはサナギタケ。鱗翅類の蛹からキノコを発生させる。
冬虫夏草は近年盛んに臨床的研究が行われ、冬虫夏草からの抽出物質の持つ免疫抑制効果、抗癌作用が明らかになり、カイコを育て、サナギタケを栽培し、乾燥、滅菌、粉砕して冬虫夏草製品として販売もされている。販売業者のサイトには、核酸系の化合物コルジセピン、ガン細胞に有効な免疫物質β-グルカン、体内のガン細胞を殺すナチュラルキラー細胞数を増やし活性化するホルモンであるメラトニン、腫瘍壊死因子のTNF-αが含まれていると記載されている。中国では昔から不老不死、強精強壮の秘薬として重用され、結核、慢性喘息、慢性気管支炎、慢性腎炎などの薬として用いられたとのこと。
サナギタケによく似たキノコは近縁のイモムシタケ。ほとんど同じようなものらしい。
ちょっと見にはベニナギナタタケにも似ていますが蛹から出ているかどうかで間違うことは無いと思います。
薬効優れたサナギタケであるが、大きなトビイロスズメの蛹に白い菌糸で覆い、頭部から出ているサナギタケを見ると、服用してみる気にはなりませんでした。
2011年10月9日 兎和野高原 3枚目のみ持ち帰り10月15日自宅で撮影


ムキタケ


ムキタケ (ヒダナシタケ目キシメジ科ワサビタケ属)
Panellus serotinus(Pers.:Fr.)Kuhn.
(剥茸)

 晩秋、深山のブナ倒木枯れ木に群生する。柄は偏心生で、群生する様はヒラタケや毒菌のツキヨタケによく似ている。

ナメコと混在することも多い。また、毒菌のツキヨタケとも同時期に発生することもあるので注意が必要である。色は汚黄色、黄褐色、緑や紫色っぽいものなど多様である。
もっとも特徴的なのは、名前の由来であるように皮が剥きやすいということである。傘の表面は少しビロード状に微毛が生えていて、その皮が剥きやすいのである。皮の下にゼラチン質の層があるかららしい。

 優秀な食菌である。大量に収穫でき、倒木から数年間毎年収穫できる。ボリュームもあり、味は穏やか、程よいキノコ臭、少し土臭い香りが気になる向きもあるが、深山の香りである。表面は多少ぬめりもあるが、ごみは掃除しやすい。付け根近くにコケや小さな木の皮が一体的に付着している場合があるが、大量収穫できるのでざっくり除去すればよい。

 水分を多く含んでいる場合が多いので、手で水分を絞ってから鍋に入れると出汁を良く吸って美味。皮の部分に苦味があるので、剥いてから食すべきと書かれているものも多いが、私は剥かなくても気にならない。鍋で食べるときは、熱い汁が口中で噴出しやけどすることがあるので、ノドヤケとかノドヤキとかの地方名もある。

 晩秋深山の優良食菌としてナメコと並ぶ賞賛が与えられているようであるが、但馬ではナメコが優先され、やや評価は低いようである。
 
 写真は兎和野高原。汚黄色と紫の強いものと2つのタイプが判ると思う。どちらもムキタケ。


ツキヨタケ


ツキヨタケ (ヒダナシタケ目キシメジ科ツキヨタケ属)
Lampteromyces japonicus(Kawam.)Sing.
(月夜茸)
 ツキヨタケはキノコ中毒の一番多いキノコである。シイタケ、ヒラタケ、ムキタケという優秀な食菌によく似ているため、そこそこ野生キノコを食べている人でも間違って食べてしまうことがある。食べると美味らしいが、食後一時間ほどで嘔吐、腹痛、下痢、すべてが青く見えたり、ホタルのようなものが飛ぶように見えたりする。滅多に死ぬことはないが、死亡例もあるから恐ろしい毒菌である。

 夏から秋にブナ等に発生する。折り重なって発生する様子はヒラタケ、ムキタケに似ており、色はシイタケに似ている。傘は茶色で濃い色の斑点のようなものがあり、少し怪しい雰囲気である。

 傘を裂くと付け根の部分に黒いしみがあるので、このしみがあれば決定的である。しかし稀にしみが薄かったり見当たらないものもあるから複数を確認すべきである。幼菌では柄の上部に付くツバがはっきりしているのも特徴である。柄は偏心生。見慣れてくるとすぐにツキヨタケと分かるようになる。
 もうひとつ特徴なのは、名前の由来であるように、ヒダの部分が発光するので夜間見るとぼんやり光っているということである。
 ブナの倒木にぎっしりと重なり合って生えているものは壮観で、これがヒラタケであったらなあと思ってしまう。
 
 写真:平成22年11月2日 香美町小代区


ヤマブシタケ


ヤマブシタケ (ヒダナシタケ目サンゴハリタケ科サンゴハリタケ属)
Hericium erinaceus (Bull.) Persoon
(山伏茸)
 外見に特徴があるキノコである。傘を作らずに、ヒダでもアミ目でもなく針を垂らしたような形になっている。若いときは真っ白で徐々に肌色になる。傘からヒダではなく針を垂らすキノコはいろいろあるが、傘を作らないでいきなり針を垂らしていることころがこの仲間の特徴である。
 ヤマブシタケという名前の由来であるが、山伏が蓑を背負った形に似ているから、、、、と思っていたが、山伏が着る衣の胸飾りに似ているからというのが正しいようだ。山伏が胸につけているあのボンボンさんのことだ。
 秋、広葉樹の枯れ木に発生する。固めのスポンジ状で、握ると水が滴り落ちた。多少苦いものもあるようだが、私の食べたものは温和な味、特においしいということもないが普通に食することが出来た。
 このキノコは漢方薬で使われており、「D-トレイトール」などの抗酸化物質を沢山含んでおり、薬効優秀であるらしい。少し怪しい健康食品?として、乾燥粉末や錠剤など販売されている。「血液中の脂質量を調整し、血中糖分量を削減する効果の可能性がある」とか、「βグルカン含有量が高いことで知られている」とか、「SOD数値が高く全食品の中でもトップクラスである」とか、ヤマブシタケに含まれる成分の「ヘリセノン」は、「認知症の特効薬として近年注目されている」とか、「免疫力を調整するきのこ」とか、なにやらよく分からないが、さまざまな効果があるようなことが書いてある。しかし医薬品ではないので具体的な効用を書いては違反になるのだろうし、わざわざ「規定により具体的には書けないので良しなにご賢察願いたい」とまで親切に説明してあったりする。
 ある健康食品サイトによると「ヤマブシタケは日本や中国の深山幽谷で、稀に発見されるキノコ」だそうだ。確かにあまり見かけないキノコではあると思う。ただし、僕はコウノトリの郷公園の山でも見たので、深山幽谷にしか発生しないことはないであろう。ちなみにこのキノコは栽培可能で、豊岡市内でも栽培されていたことがある。

 その姿、名前、さまざまな薬効が期待できる成分、、、、心と健康の不安な現代において、野生キノコと縁のない方々には健康食品として粉末や錠剤を購入する人もいるんでしょうね。
 山伏茸 (山伏のようなキノコ)
 写真:平成20年11月3日 豊岡市 コウノトリの郷公園内の山中


ナメコ


ナメコ (ハラタケ目モエギタケ科スギタケ属)
Pholiota nameko (T.Ito)S.Ito et Imail in Imai
(滑子)
 西日本の深山キノコの王様はナメコと言われている。私は豊岡周辺の低山を中心にキノコを見ているので、大量にナメコを採ったことがない。村岡や小代の人から大量のナメコを採った話を聞いてはうらやましく思っていた。

 この秋、氷ノ山山系へナメコ採取に連れて行ってもらう機会に恵まれた。11月下旬である。時期的にもう遅いかもと言われていたが、まだ残っていた。ブナ林のブナやミズナラなどの倒木朽木、発生の仕方が豪快である。倒れていない朽木では、手が届かないので口惜しい。倒木なら採取しやすく嬉しい。
 倒木の場合、ナメコのヌメリのため、木の葉の破片や腐葉土などのごみが付きやすい。だから、ごみの付いていないものだけ選んで、付け根を鋏で切って、直接袋で受ける。ごみの付いているやつは絶対に入れない。そうすれば、家で食べるときに掃除をしなくて速やかに食することができるのだ。これも大量に発生しているから出来るのであって、贅沢なことである。簡単にレジ袋半分ほど採取できた。

 野性のナメコのおいしさは、発生途中の小さな栽培品と比べ物にならない。ボリュームもあり、ヌメリ食感、歯ごたえ、味、香り、すべてにおいて数段勝っている。食菌としての優秀さについては多くを記載する必要はなかろう。
写真:平成21年11月29日 香美町村岡区


ササクレヒトヨタケ


ササクレヒトヨタケ (ハラタケ目ヒトヨタケ科ヒトヨタケ属)
Coprinus comatus (Muller:Fr.)Pers.
(ささくれ一夜茸)
春から秋にかけて、道端や草原、堆肥置き場など、地中に有機物が埋もれていると思われる場所に発生する。

地面からぎっしりと束になって発生し、時に高さ30センチぐらいに巨大化するものもある。

若いときはこけしのように整った形で、まっすぐな軸に縦長楕円形のボンボンさんが付いている感じ。傘にはささくれがある。ボンボンさんの傘は徐々に開き弾頭型になりさらに開いていくが、同時に端のほうから黒ずんで、液化して溶けて行く。

図鑑では黒インク状になると良く表現されているが、実際にインクの代用に利用されたこともあるという。立派なきのこが一夜でとろけてしまうから一夜茸と呼ばれる仲間である。ささくれのないヒトヨタケとささくれのあるササクレヒトヨタケがこの仲間ではまずまず有名だと思う。黒くとろけてしまう特徴と、人目につく場所での発生、ヒトヨタケは食べられるのだが、お酒を飲むと悪酔いするということで有名。ササクレヒトヨはそんなことはなく、食用となる。
ササクレヒトヨタケは歯ごたえ良好、香り味とも温和でおいしく、間違えることもなく大量に採れるので優秀な食菌と思う。栽培もされている。お酒を飲まなければヒトヨタケも食べられるが、禁酒をしてまで食べる熱意はないので、ささくれがあると嬉しい。

写真は海岸の砂浜に発生していたもの。
ささくれ一夜茸:ささくれのある一夜で溶けるキノコ
但馬では珍しいキノコではないと思う。


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