連載コラム 一覧

ツルシギ


ツルシギ(チドリ目シギ科)
 春と秋の年2回、移動の途中に豊岡盆地に立ち寄る渡り鳥観察を楽しみにしている。特に注目しているのが、六方田んぼの湛水田だ。田んぼに水を張れば沢山の水生生物が住むようになり、渡り鳥が餌の補給にそこに下りてくる。
 今は人の力なしで田んぼに水を張ることは難しくなった。コウノトリの餌場確保という名目があって、休耕田に水を張ったり冬季湛水が行なわれつつあるが、湛水田は豊岡盆地上空を渡ってゆく野鳥たちにとっても貴重なオアシスを提供することになる。
 六方田んぼの河谷放鳥拠点から、このたび4羽のコウノトリが放たれた。拠点の周囲は常時水が張ってあり、放鳥コウノトリたちがいつでも餌場として利用できるよう配慮されている。そこに見慣れないシギが1羽やってきた。
 遠目には、この時期よく観察されるアオアシシギだと思っていたが、朱色の脚、まっすぐ長く伸びるくちばしからツルシギと同定した。おそらく今年生まれの幼鳥と思われるが、東南アジアへの初めての越冬旅行の途上。
 警戒心の薄い鳥で、餌採りに夢中の時は10m以内の距離にまで寄ってくる。コウノトリの餌のとり方とよく似ていて、長いくちばしを水中に突っ込んだまま、左右に振って触覚で獲物を捕らえる。水生昆虫が中心で、ときどき小魚も捕まえた。
 我が国でのツルシギの観察例は多くなく、特に秋の観察は少ないという。但馬でも過去数例、春の観察があるようだが、秋の観察例は今回が初めてかも知れない。脚と下くちばしの朱色を除けば地味な鳥だが、春の渡りでは真っ黒に換わった繁殖羽根の姿を見ることができる。次回はぜひ春に出会ってみたいものだ。
文と写真 NPO法人コウノトリ市民研究所・高橋 信
※2006年10月29日(日)掲載


アカヤマドリ


アカヤマドリ
ハラタケ目 イグチ科 ヤマイグチ属
 巨大なキノコである。カサの経は20CMを超えるものがざらである。色は赤茶~褐黄色で鮮烈で毒々しい。表面が大きくひび割れ、きめ細かなスポンジ状の内部が露出している。少しメロンパンを思い出す。イグチの仲間だからカサの裏側にはヒダはなく、緻密な網目状になっている。
夏の終わりから秋の初めに、少し明るい広葉樹の里山によく発生する。見た目は強烈であるが、とても美味しいキノコである。心地よいキノコ臭、カサの部分はつるんとした歯ざわり、茎はしっかりとしている。癖のない味、一本でも十分な収穫量。見た目がすごいだけにその有用性を知ると忘れられないキノコとなる。
暑い時期のキノコなので、虫が入りやすい。このアカヤマドリも特に虫にやられやすい。しっかりとしているはずの茎の部分をつかむと、ぐにゃりと曲がってしまいびっくりすることがある。中を割ってみると沢山の虫たちが大騒ぎをしている。成長途中の幼菌であっても、すでに虫の食べた筋が沢山入っていることも多い。老熟するまで放っておくと、カサの部分がぼろぼろに砕けていたり、半分ぐらいが爆発したように散乱している。さらには、茎の形はかろうじて残っているが、カサの部分はどこかに消失してしまっている。すべて、ショウジョウバエやキノコバエ、キノコムシ、ナメクジ、その他よく分からない生き物たちの大宴会の結果なのである。
私たちがこのキノコに出会ったとしたら、大喜びする前にまだ食用に耐えられる状態かどうかを確認することが大切である。沢山発生している時は虫による被害は少ないが、たった一つだけ見つけたりした時は特に危ないように思う。見た目もすごいが中身もすごいことになっているかもしれない。
このような事情さえなければ、アカヤマドリは紛らわしい毒菌もなく安全で優秀なキノコである。
 
2006,10,22日掲載
NPO法人 コウノトリ市民研究所
主任研究員 稲葉一明


ヒガンバナ 草刈りのあとの赤い絨毯

ヒガンバナ  ヒガンバナ科

 今年もヒガンバナの季節がやってきた。ヒガンバナを漢字で書くと彼岸花だ。ヒガンバナは、毎年、ほぼお彼岸に花を咲かせる。全く見事なものだ。
 9月3日、新理科教育メーリングリストに「彼岸花はまだでしょうか」という発言があった。9月5日には福岡県から開花の知らせが入っていた。そうか、早いところではもう咲いているんだ、ちょっと気をつけてみようと思った。
 ようやくヒガンバナの赤い花が目に入ったのは、9月17日。ほとんどがまだつぼみだが、一部が咲き始めていた。場所は、日高町府市場。円山川の堤防だった。そこは、ほんの数日前に草刈りが終わったというような状況で、まさにヒガンバナのための舞台が整っているという感じだった。なかなかいい仕事をしているなあ、国土交通省と思った。
 国土交通省は、台風シーズンを前に堤防の点検がしやすいように円山川の堤防の草刈りをする。堤防の草刈りをしないとどうなるか? 堤防の異常が発見できないのは当然として、草を刈らないとやがて木が生えてくる。この木の根が悪さをする。大きく育った木の根が枯れたりすれば大きな穴があいて堤防はぼろぼろになる。堤防の草は毎年、毎年、年に数回刈らないといけない。堤防に草原があって、春に黄色いカラシナの花、秋に赤いヒガンバナの花、セイタカアワダチソウの黄色い花、・・・が決まったように咲くのは、国土交通省が定期的に草刈りをするからなのだ。
 府市場の堤防は、この記事が掲載される頃には赤い絨毯のようになっているだろう。タイミングよく草刈りをすると花は見事だし、花の後に地上に出てくるヒガンバナの葉は何者にも邪魔されることなく太陽の光を浴び続けることができる。ヒガンバナはそうして蓄えた栄養分で広がり、翌年には一層見事な花を咲かせることができる。私はヒガンバナの名所が増えることを願っている。そのためには、ヒガンバナの咲く場所では、なんとしても9月初旬には草刈りを終わってほしいものだ。

追記
 新理科教育メーリングリストというのは、左巻健男さん(同志社女子大教授)が代表の
会議室です。1000名を超す理科関係者が集まっています。 
 当初、写真は群落写真を使おうと思っていました。これから見事に咲きそうという感じがする写真だったからです。ところが紙面にあわせて白黒にすると、どこにヒガンバナがあるのかさっぱり分かりません。それで、白黒のものに差し換えました。紙面が早くカラーになればいいなと思います。


ギンヤンマ


ギンヤンマ(不均翅亜目ヤンマ科)
 田んぼにはいろいろなトンボが発生する。水を張ってビオトープにしておくとさらにいろいろなトンボが発生する。真夏のビオトープにはシオカラトンボ、ショウジョウトンボ、コシアキトンボ、ウスバキトンボなどが飛び回っている。その中でひときわ大きなものはギンヤンマ。オスの腹部は鮮やかな青色に輝いており、遠くからでも良く目立つ。
 トンボのオスたちは縄張りを作ろうとして、他のオスが近づいてくると激しく攻撃して追い払ったりしている。飛び回っているかと思うとあぜや水草などに止まったり。しかしギンヤンマは常に飛んでいて、ゆっくり移動したり、ホバリング(静止飛行)したり、他のオスを見つけて猛スピードで追いかけて、バシッと音を立てて体当たりしたり、見る見るうちに空高く舞い上がってまた水面50cmあたりまで降りてきたりして忙しい。ギンヤンマが飛んでいない時というのは、オスとメスとつながって産卵のために水中にお尻を突っ込んでいるところしか見たことが無い。
 チョウトンボとかカワトンボの仲間は、ひらひらと飛ぶので羽の動きが肉眼でも分かるが、ギンヤンマをはじめ高速で飛ぶトンボたちについては速すぎて見えない。シャッター速度を1000分の一秒ぐらいで写真を撮ると、トンボの羽が止まって写る。飛行中のトンボの撮影はなかなか難しいが、ギンヤンマの動きを観察していると、田んぼの中を巡回する大体のパターンらしきものがあるのに気が付くし、長い間待っていると、うまい具合に手ごろな距離で数秒間静止飛行をしてくれることがある。コツをつかむと飛行中のギンヤンマは比較的写真に撮りやすいことが分かる。
 4枚の羽が複雑に動いている。左右対称のときもあれば、非対称の時もあり、すべての羽が上がっているかと思うと、3枚が上で一枚が下、あるいはきれいな×印になっていたり、どのような周期で動いているのか良くわからない。
写真・文 コウノトリ市民研究所 稲葉一明
※2006年8月27日掲載


ツキノワグマ

しなやかな森の住人
ツキノワグマ(食肉目クマ科)

 6月最後の週末、朝7時半。梅雨空を割って少し光が射した。谷のどん詰まり、スギ林横に車を止めて助手席のデジタルカメラに手を伸ばした。先ほど、下流で撮ったばかりのヤマセミの写真をチェックする。
 渓流を横断するワイヤーロープに、3羽のヤマセミを見つけたのだ。どうやら1羽のメスをめぐり、2羽のオスが争っている場面のようだった。飛び去るまでの短い時間で、それなりに撮れたのが嬉しかった。
 液晶画面の写真を順送りしていると、開け放った窓から「バキッ」という、しかし十分に神経を使った断続音が近寄ってきた。その瞬間、確かな予感がした。
 カメラを撮影モードに切り替え、着けたままの望遠レンズを右の窓越しにすばやく突き出した。ファインダーを覗くのと、その四角い視野に黒い影が左へ動くのが同時だった。紛れもなくツキノワグマを、私はレンズにとらえていた。
 相手との距離は20メートル。しかもこちらは車の中。恐怖感はまったく無かった。カメラの設定を考える間もなく、シャッターボタンを押していた。相手はすでにこちらに気付き、大慌てで逃げ出していたからだ。
 3回目のシャッターを切ったところで、ツキノワグマは一瞬こちらを向いたあと視界から消えた。その動きは実にしなやかで、あたりに大型の獣が走り去った気配は無かった。一瞬の足音だけを残し、森はすぐにもとの静寂を取り戻した。
 ツキノワグマによる人身事故が絶えない。彼らが人里に出てくる理由については、すでにいろいろと言われている。猛獣であることには違いないが、私が目の前で見た森の住人は、意外なほど小さく、そしてとても臆病な生き物だった。そんな彼らとうまく折り合って暮らす方法を、私たちはこれからも模索し続けなければならない。
文と写真 NPO法人コウノトリ市民研究所・高橋 信
※2006/8/13(日) 掲載


微妙な環境の希少種

ミゾコウジュ シソ科

 私たちコウノトリ市民研究所の仕事の一つに豊岡盆地の生き物地図作りがある。1999年に最初のものを作り、以降毎年作ってきている。この3月に発行した生き物地図2006は、豊岡盆地の絶滅危惧植物を集めたもので、私が担当した。表面には絶滅危惧植物を生育地別に配置し、写真と短い解説が添えられている。裏面には、一覧表が載っている。コウノトリ文化館などで販売している。買っていただけると活動資金となるのでありがたい。
 なんとか完成させたが、手持ちの写真がなく名前だけの植物がいくつか残っている。写真の中に文字だけというのはなかなか悔しいもので、実は、改訂版に向けて4月から名前だけの植物の写真を撮ろうとがんばっている。ミゾコウジュもそんな植物の一つだ。5~6月に毎週のように河原に通って、ミゾコウジュも写真におさめることができた。通い始めると気になり、つぼみが花になり、花が実をつけるところまで観察することができた。
 国土交通省による河川水辺の国勢調査年鑑により、円山川のミゾコウジュの存在は十年程前から知っていた。年鑑には詳細は場所はなかったが、ミゾコウジュの生えている場所は予想できた。しかし、そこに行く機会はなかなかなかった。ミゾコウジュの花が咲くのは、5月の中頃。季節が悪い。この季節はどうしても目が山に行く。山の植物たちは毎週のように姿を変える。限られた時間の中であっちの山こっちの山と、行きたい場所、行かなければいけない場所がいくらでもある。川にまで手が回らなかった。
 これではいけないと一昨年から一日二日と歩いていたが、見つけることができなかった。今から思うと場所と時期をわずかに間違えていたようだ。今年の観察でなかなか微妙な環境に生育することが分かった。これからも気にかけていきたいと思う。
2006.7.29掲載 菅村定昌 


タマキクラゲ


タマキクラゲ  赤褐色の山のゼリー
膠質菌類 キクラゲ目 ヒメキクラゲ科 ヒメキクラゲ属
 梅雨の時期に里山を歩く。雨上がりの山の中は蒸し暑く、すでに蚊も出ているので蚊取り線香を焚いて行く。たくさんのキノコが出ていることもあるし、まったく見られないこともある。
 枯れ木の枝に、3cmほどの円くてみずみずしいゼリー状の物体が列を成すように盛大に発生している。キクラゲの仲間である。
図鑑で調べてみるとタマキクラゲであった。黄褐色から赤褐色のキノコで、乾燥すると収縮して薄い膜状になるが、水を含むとゼラチン質の座布団状から球状に膨らむ。キクラゲの仲間には、隣のものとくっ付くと癒着融合してしまうものがあるが、タマキクラゲは独立したままである。
キノコの表面に、赤い小さなつぶがくっ付いている。良く見るとじわじわと移動しているので、小さな虫であることがわかった。シラミの仲間かなと思っていたのであるが、あとで写真を仲間に見てもらうと、土壌動物でイボトビムシの仲間であろうと教えてくれた。さらによく見ると、キノコのゼラチン状の本体の中に、昆虫の幼虫らしきものがもぐり込んでいた。こちらはキノコバエであろうか。いろいろな生き物がつながって生活している。
 このキノコ、かすかに心地よいキノコ臭を放っており、プリンプリンして美味しそうである。キクラゲの仲間に毒は報告されていないはずなので、さっと湯をくぐらせてポン酢で食してみたが、中華料理に使われるキクラゲのようなこりこりとした食感はなく、柔らかくねっとりとした感じで、どちらかというと美味しいというものではなかった。ゼリーとして黒糖蜜をかけて食べると美味しいという情報もあったが、残念ながらあとから聞いた話であった。
 
NPO法人 コウノトリ市民研究所
主任研究員 稲葉一明
06.06.25掲載


アリスイ

は虫類の威を借りる鳥

アリスイ(キツツキ目キツツキ科)
 一年を通じて野鳥観察をしていると、いつごろ、どのあたりに、どんな鳥がやってくるのかが分かってくる。越冬のために北から下りてくる冬鳥や、繁殖のために南から戻ってくる夏鳥は、毎年ほぼ同じ行動を示すので予測もしやすい。
 渡りの一時期に立ち寄る鳥を旅鳥と言うが、旅鳥の行動パターンは一定しないことが多い。ある種の観察頻度の多い年は、その鳥の「当たり年」というような言い方をする。年によって見れたり見れなかったりするから、野鳥観察も飽きずに続いているのかも知れない。
 4月半ばの豊岡盆地は、行く鳥、来る鳥が混じりあって、一年で最も野鳥観察が面白い時期にあたる。ある日、六方川沿いの芽吹いたヤナギの葉陰に、ひょっこり出てきた鳥に驚いた。図鑑やインターネットの写真でしか見たことのない鳥だったが、ひとめでアリスイだと分かった。ウロコ状の羽根、太長くよく回る首。その特徴的なフォルムは他の鳥と間違えようがない。
 生き物は様々な方法で天敵から身を守る。アリスイは自らの姿をは虫類に似せることで、相手を脅す方法をとった。キツツキの仲間であるが、そういわれてもイメージできないほどにユニークな存在である。その名の通りアリが好物だが雑食性。日本では東北や北海道で繁殖。他のキツツキがあけた穴を巣として利用する。
 ジンクスという言葉があるが、実はアリスイの学名に由来している。ヨーロッパではその姿態から不吉な鳥とされ、この鳥を見ると悪いことが起こると信じられてきた。アリスイにしてみれば不本意だろうが、相手を気味悪がらせるこの鳥の作戦は見事に成功しているともいえる。
 なかなか出会える鳥ではない。渡りの季節にひっそりとアリスイがここに立ち寄っていることが分かれば、次の出会いがまた楽しみになる。
文と写真 NPO法人コウノトリ市民研究所・高橋 信
※2006/6/19(月)掲載


日本生まれの白い花;キビシロタンポポ

キビシロタンポポ キク科

 多くの人はタンポポの花は黄色だと思っているが、タンポポは黄色に限らない。白もある。いや、九州や四国のようにタンポポは白だと思われていて、黄色いタンポポは珍しいと思われている場所もある。
 但馬にも白いタンポポは少なくない。出石から但東にかけて路肩が真っ白になっている場所があちこちにある。朝来市あたりにもそんなところは結構ある。
 日本には白い花をつけるタンポポが複数種類ある。一番多いのはシロバナタンポポで、但馬の白いタンポポもほとんどがそれである。
 「珍しいタンポポを見つけました。」「これは外国のタンポポですか?」などと問い合わせが時々あるが、シロバナタンポポは、珍しくないし、外国からやってきたタンポポでもない。正真正銘の日本のタンポポである。
 シロバナタンポポ以外の白いタンポポは、限られた場所にしか生育しないと言われていた。ところがそのうちの1種が兵庫県にもあるらしいことが分かってきた。そのタンポポはキビシロタンポポと呼ばれ、その名の通りキビ;吉備(岡山県)のタンポポだと思われていた。このタンポポを探し始めたのが1998年である。
 2004年に美方町でようやく1株を発見した。同じ年、おもしろ昆虫化石館の西川さんも温泉町で発見されていた。二人とも一度も実物を見たことがなく確信はなかったが、最終的には、専門家によるDNAの解析でキビシロタンポポと確定された。2005年には朝来市、香美町、新温泉町でも確認できた。
 調べてみて困ったことが分かった。咲き始めの頃のシロバナタンポポは、これまでキビシロタンポポのものとされていた特徴を備えていたのだ。両種を外見で区別することは難しい。なんか変な白いタンポポと感じたものを専門家に送ったが、シロバナタンポポと判定されたものがいくつもあった。DNAの分析ができず外見だけで勝負している私としてはなんとも悲しい現実である。
追記
 最初の写真は咲き始めの頃のシロバナタンポポ。舞狂橋のすくそばで撮影した。背は低いし、総苞片はぴったりと張り付いているし、総苞片に毛は多いし、花弁は黄色を帯びているし、・・・・と、もうキビシロタンポポと思える個体でした。専門家に送るとシロバナタンポポと判定されました。
 しかし、2005年に初めてこれだと思ったのが下の写真。雰囲気が違う。これだと思いましたね。以後、なんとなく分かるような気がした。朝来市で発見できたのはこの場所だけ。他の産地とかなり離れている。間の場所を調べないとと思いながら、2006年のシーズンが終わろうとしている。


タカブシギ

春の湛水田の常連

タカブシギ(チドリ目シギ科)
 六方田んぼで始まった冬季湛水。田んぼに水を張ったまま初めての冬を越した。強い寒波の影響で、この冬の渡り鳥たちの動きに異変があった。本来は当地で越冬するはずのツグミやホオジロの仲間が姿を見せなかった。そのかわりに、豪雪を逃れて従来の越冬地から南下してきたコハクチョウの群れが、湛水田をねぐらにしながらここで一冬を過ごしたのである。
 冬季湛水が定着すれば、いずれコハクチョウの越冬が見られるだろうと思っていた。気象条件の影響があったとはいえ、あまりにも早く結果が出たのには驚いた。
 春になり湛水田の水がぬるむころ、南の越冬地から北の繁殖地に向かうシギやチドリの渡りの群れが通過してゆく。彼らにとって、湛水田は翼を休め餌を補給するオアシスだ。渡り鳥はこうしたオアシスを中継地としながら北帰行を続ける。
 湛水田の常連といえばタカブシギだろう。体長20センチほど。漢字で鷹斑鴫と書く。羽模様がタカに似ていることから命名された。数羽の群れで行動し、湿地の中を歩き回って泥の中の虫を食べる。人が近づくと「ピピピピ」と高い声で早口で鳴きながら飛び立つ。飛んだときに腰の白が目立つのもタカブシギの特徴のひとつ。
 最近は田植え時期が遅くなった。田んぼに水が張られる頃には渡り鳥の移動のピークが過ぎてしまっている。その意味でも、冬季湛水田が渡り鳥に果たす役割は大きいのである。
(文と写真 NPO法人コウノトリ市民研究所・高橋 信)
※2005年4月30日(日)掲載


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