テーマ別フォトコラム 一覧

ヒメベニテングタケ


ヒメベニテングタケ(テングタケ科 テングタケ属Amanita rubrovolvata Imai)
(姫紅天狗茸)
 絵本によく出てくる赤地に白いぽつぽつが美しいキノコがある。これは概ねベニテングタケを描いている。ベニテングタケというキノコは、中部地方以北が分布の中心で兵庫県には基本的にない(他地域からの移入による発生の報告はある)。

 ヒメベニテングタケの名前の由来は「小さなベニテングタケ」ということである。確かにテングタケで、赤くて、タマゴタケではないとなると、ベニテングタケ?と一瞬思ってしまった。しかし、小型であるだけでなくベニテングタケとはかなり雰囲気が違う。カサや柄の根元に残るツボの破片は橙赤色であることが決定的に異なっている。

 ヒメベニテングタケ、夏から秋にかけてブナ林やミズナラ林などに発生する。小さくて可愛く美しいキノコである。

 写真は兎和野高原


トゲアリ


トゲアリ  ハチ目・アリ科・トゲアリ属
Polyrhachis lamellidens
棘蟻

森林内を歩いていると、木の幹が黒くなっている。よく見ると多数のアリの塊である。ミツバチの分蜂のようなものであろうか。



このアリを良く見てみると、胸部は褐色で大小4対8本の棘が生えている。調べてみるとトゲアリであった。

やや稀と記載されている資料があったので、次の週もわざわざ同じ場所に観察に行った。普段は注意していなかったアリであるが、このアリの特徴を覚えると、その辺の山でも良く見かけることが出来ることが分かった。

但馬では普通種だと思う。大型の山に棲むアリで、胸部の褐色と棘で簡単に見分けることが出来る。

背中の棘はかなりいかめしい。どんな役に立っているのか不明である。自分の体に刺さりそうで、その関係か腹部は常に下を向いている。
近くで観察しても人間には無関心なようで、今のところ噛まれたりしたことはない。

体長7~8 mm。巣は朽木などに作られる。生態的にはクロオオアリ、ムネアカオオアリなどに一時的に寄生するのが特徴である。トゲアリの新女王アリが他のアリの巣に侵入し、そこの女王を殺して居座り、その巣にいる働きアリに自分の子どもを育てさせる。元からいたアリがやがて死滅すると、トゲアリ単独の巣となる。これを一時的社会寄生という。


イラカザトウムシ


イラカザトウムシ(♂) 節足動物門鋏角亜門クモ綱ザトウムシ目カワザトウムシ科スベザトウムシ亜科
(Gagrellopsis nodulifera Sato & Suzuki)
甍座頭虫

神鍋高原の森林内でアリの観察をしていたらザトウムシが近づいてきた。先日ザトウムシのことを少し勉強したところなので、早速撮影を試みた。ヤマスベザトウムシではないかと思ったが、鳥取大学の鶴崎先生に写真を見ていただくとイラカザトウムシのオスであることが判明した。この種は背中に瓦を積み重ねたような模様があるのだが、オスは色が淡いのでヤマスベザトウムシと間違いやすい。しかし、5月に成体が観察されていることや標高からイラカザトウムシに間違いない。

イラカザトウムシは、兵庫県内だけで染色体数が2n=14,16,20.22,24と多様であることがわかっている。ザトウムシ類は移動能力が低く、地域的分化の目立つ仲間である。このイラカザトウムシは、鶴崎先生の研究資料を見ると2n=20か22の可能性が高い。
体長4~5mm程度。オレンジ色の体で背に瓦を積み重ねたような模様が特徴。メスは甍模様が黒褐色ではっきりしているがオスは淡い。幼体越冬で成体は5~7月ごろに見られる。森林生活者。ザトウムシ、魅力的な歩き方である。


クロベンケイガニ


クロベンケイガニ (十脚目 イワガニ科Chiromantes dehaani)
黒弁慶蟹

円山川の下流域の石積み、土手などにいる。石の隙間や土の穴に住んでいる。よく似た仲間にアカテガニもいるが、アカテガニよりは水に近い場所で生活している。

 陸上で生活するクロベンケイガニやアカテガニは、挟み脚の付け根にある給水口から水を体内に取り入れ、鰓で呼吸する。その水を口の上にある孔から出して、酸素に触れさせて、再び吸水口から体内に取り入れる。同じ水で繰り返し鰓呼吸するのだ。だから水分が不足してくると、水は粘りけを増して泡ふき状態になる。

雑食性で枯れ草やミミズなどいろいろなものを食べているようだ。
全体が黒っぽいが、大型になると挟み脚が青紫色になってくる。
 兵庫県レッドデータではCランクに記載されている。「特殊な環境に生息・生育する種、個体数の極めて少ない種、分布域の極限している種等県内において存続基盤が脆弱な種」ということである。円山川下流域でも、いるところには沢山見られるが、どこにでも普通には見られるということはない。


ヒコナミザトウムシ


ヒコナミザトウムシ
 (ザトウムシ目、 マザトウムシ科 Nelima nigricoxa Sato & Suzuki)
ザトウムシは山の中で生活している。節足動物のクモ綱に属し、クモに似ているがクモのように頭胸部と腹部でくびれていない。複眼でもない。単眼が一対ある。座頭虫、めくらグモなどと呼ばれるがちゃんと眼はある。糸も吐かない。分類的にはダニに近いようである。

山の中を歩いていると、よくザトウムシを見かける。長い足で動体を浮かして、地面や樹上をゆっくり歩いている。私はこれまでザトウムシについてはほとんど調べたことが無いのであるが、里山で見かけるものは小さくて弱々しいものが多いように思う。昨年秋に標高の高いブナ・ミズナラ林で、やけにデカイザトウムシに出会った。これまで持っていたザトウムシのイメージとかなり違う。大きくてしっかりしているのだ。ネット等で調べてみて自分なりにオオナミザトウムシと同定したが、オオナミザトウムシは円山川以東にしか分布していないことが分かり、外見的にはほとんど識別困難なヒコナミザトウムシであるとの結論に至った。

胴体が大きい。1センチぐらいある。足が長い。足まで入れると手のひらぐらいになる。
SFの宇宙生物のようである。頭胸部から出ている、一対の単眼、4対の脚。山の中は小さな虫にとっては障害物だらけで、飛んだり、飛び跳ねたり、掻き分けたり、もぐったりして移動する、あるいはほとんど移動せずに生活するものが多い。しかし、ザトウムシは長い足で動体を持ち上げ、8本の足でゆっくりと歩いて移動する方法をとっている。

SF映画にこういう形態の生物とかロボットとか乗り物とかがよく出てくるように思う。独特なのである。
落ち葉などを食べているのかと思ったら、意外と動物食で昆虫の死体などを食べているようだ。あまり生態が研究されていないグループのようです。普通種。

写真:2011年11月 兎和野高原
*このブログに投稿時点ではオオナミザトウムシとしておりましたが、ザトウムシの研究者である鶴崎展巨先生のお話を聞く機会があり、ヒコナミザトウムシであることが分かりましたので、記述を修正しました。平成24年6月2日。


クリタケ


クリタケ (ハラタケ目 モエギタケ、クリタケ属 Naematoloma sublateritium (Fr.)Karst.)栗茸
秋から初冬に広葉樹の倒木、切り株、土中の埋もれ木から群生。カサは茶褐色でクリの色のイメージに近いものが多い、名前の語源であろう。若いカサは繊維状の薄皮をほろほろとまとっているのも特徴だと思う。キノコらしい形。ツバ、ツボはない。

歯ごたえ良好味温和。市販のブナシメジのイメージにちかいと思う。あたればごっそり大量収穫できるのが良い。鍋でも油を使った料理でも用途は広い優良菌。
近年は、毒成分を含んでいるので毒菌に分類されている本もあるが、古くから食用とされている。
間違いやすい毒菌としてはニガクリタケがある。ただ、ニガクリタケは色合いがレモン色っぽいのとやや小さめで、噛めば苦いので見分けるのは難しくない。
秋のブナ林では、クリタケ、ナメコ、ムキタケの3種が主たるねらい目になるのでしょうか。
2011年11月23日 兎和野高原 


テントウムシの越冬


阿瀬渓谷を歩きました。今年は紅葉にはまだ少し早いようです。気温も上がり、小さな虫がたくさん飛んでいます。よく見るとテントウムシです。日当たりのよい大きなスギの表面に集まっているようです。今日はいいものを見たと思って歩いていると、今度は岩の表面に無数のテントウムシがいます。幅数メートルの岩肌に、すごい数です。どこからこんなに集まってきたのかと思うぐらいいます。テントウムシは、日当たりのよい岩の割れ目や樹皮の隙間などで越冬します。今日のような暖かい日は、越冬場所探しの大移動中なのかもしれません。

いろいろな模様のテントウムシが見られますが、すべてナミテントウのようです。ここで模様ごとにカウントしたら、数千レベルのいいデータになるのにと思いましたが先を急ぎました。

よく見るとカメノコテントウが混じっていました。カメノコテントウはクルミハムシの幼虫を食べるのので、オニグルミの多い阿瀬渓谷ではたくさんいてもおかしくありません。でも、こんなに簡単にたくさんのカメノコテントウを見たのは初めてです。


サナギタケ


サナギタケ
 (バッカクキン目、 バッカクキン科、冬虫夏草属Cordyceps militaris (Vuill.) Fr.)
蛹茸
 香美町村岡区の兎和野高原で、冬虫夏草を見つけた。ブナ、ミズナラ、スギなどの森で、腐葉土の地面から、オレンジ色の棍棒状のキノコが生えている。掘り返してみると大きな蛹からキノコが生えている。蛹はスズメガの仲間のトビイロスズメだと思われる。

 冬虫夏草、冬は虫なのに夏には草になるという意味、少し乱暴な表現である。ガやトンボなど昆虫類にキノコの菌糸が入り込み、やがて昆虫の体内で虫体を栄養源にはびこり、最終的には宿主(虫)を殺しキノコを発生させる。イモムシタケ、トンボタケ、セミタケ、、いろいろな種類がある。今回見つけたのはサナギタケ。鱗翅類の蛹からキノコを発生させる。
冬虫夏草は近年盛んに臨床的研究が行われ、冬虫夏草からの抽出物質の持つ免疫抑制効果、抗癌作用が明らかになり、カイコを育て、サナギタケを栽培し、乾燥、滅菌、粉砕して冬虫夏草製品として販売もされている。販売業者のサイトには、核酸系の化合物コルジセピン、ガン細胞に有効な免疫物質β-グルカン、体内のガン細胞を殺すナチュラルキラー細胞数を増やし活性化するホルモンであるメラトニン、腫瘍壊死因子のTNF-αが含まれていると記載されている。中国では昔から不老不死、強精強壮の秘薬として重用され、結核、慢性喘息、慢性気管支炎、慢性腎炎などの薬として用いられたとのこと。
サナギタケによく似たキノコは近縁のイモムシタケ。ほとんど同じようなものらしい。
ちょっと見にはベニナギナタタケにも似ていますが蛹から出ているかどうかで間違うことは無いと思います。
薬効優れたサナギタケであるが、大きなトビイロスズメの蛹に白い菌糸で覆い、頭部から出ているサナギタケを見ると、服用してみる気にはなりませんでした。
2011年10月9日 兎和野高原 3枚目のみ持ち帰り10月15日自宅で撮影


イノシシの掘り起こし

イノシシの掘り起こし

イノシシの害が深刻である。
畑を荒らして農作物を食害する。稲刈り前の水稲を食い散らかす。大豆や小豆を食い散らかす。一晩でむちゃくちゃにされるから農家にとってはたまったものではない。これらの被害は、柵で囲うことによりある程度は防ぐことが出来る。しかし、ほかにも厄介な被害がある。山の中を歩くと、時々イノシシのヌタ場を見かけることがある。それが近頃は山の中でなくてもイノシシの掘り返しを良く見かける。農地などを掘り返すことによる被害である。

農作物がない時でも田んぼや畑に侵入し掘り返す、あぜや法面も掘り返してしまう。農地だけではない、道路や住宅の敷地の法面も掘り返してしまう。大雨で斜面が崩れてしまうことがあるが、それに十分に匹敵する損害を与えてしまう。復旧するのも大変だし、場合によっては直したそばから、また掘り返す。

イノシシの掘り返しを知らない人に見せたら、イノシシが掘り返したこととはなかなか信じてもらえなかったりする。まるで耕運機で作業したようである。困ったことにイノシシは、耕運してほしいときにはしてくれない。

イノシシは、土の中のミミズや昆虫やクズなの植物の根、おそらく越冬中のカエルやヘビなども食べているのだと考えられる。食べるためというより本能的に掘り返すのだという説もある。


ニホンイノシシ


ニホンイノシシ (偶蹄目 イノシシ科Sus scrofa leucomystax)
日本猪
世界には30種類ほどの猪の亜種がおり、日本にはリュウキュウイノシシとニホンイノシシがいる。但馬にいるのはニホンイノシシ。本来は人目には付かない生き物であるが、明るいうちから目撃されることが増えている。イノシシによる農作物を食害したりあぜや土手を掘り返すなどの被害が深刻である。

通常は夜間に出没し悪さをするのであるが、行動が大胆になってくると明るいうちから人間の生活圏に出没するようになる。
写真は豊岡市街地に近い田んぼ。山から200mぐらい離れているだろうか。耕作放棄地、河川を通ってやってくる。3月29日の夕方4時ごろ。車で近づくと、特にあわてる様子はないが、田面の餌を探しながら徐々に離れていく。一応警戒しているようだ。私が車を止めて外に出ると、仕方なしに逃げていった。

イノシシの繁殖力は高く、毎年春先に4から5頭ぐらいの子供を生む。横縞模様のウリボウと呼ばれる子供たちが条件が良ければみんな育つのでどんどん増えていく。
草食に偏った雑食性であるが、昆虫、ミミズ、カエルやヘビなどの動物性も食べる。植物食は地下茎やタケノコなどが中心のように考えられるが、柔らかい青草や木の葉も大好きで、畑の農作物や水稲(特にお米が実りつつある乳熟期から収穫期まで)も被害にある。味を占めると柵で囲っても執拗に入ってこようとするので防御するのが大変である。


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