豊岡盆地のイトヨ プレ調査

【日 時】2007年5月13日(日)15:00~17:30
【参加者】主任研究員8名
2007年度のNPO総会終了後、最近話題になったイトヨ(トゲウオ)の調査に行こうと有志が行動した。かつて本川とつながるいくつかの水田水路にイトヨが遡上してきた。その昔、豊岡高校生物部ではイトヨの調査を継続的に行っていた。最近の事情はさっぱり分からない。

激特事業で河道拡張工事が行われている現場。工事前は本川と細い水路でつながっていた池(というか沼というか、水溜り)がある。10年ほど前、この場所で子供とザリガリ採りをしていたら偶然イトヨが網に入って驚いたという市民からの情報を、最近国交省に伝えた。
さっそくにも国交省の調査が入った。現時点でイトヨを確認するには至らなかったが、経緯を踏まえてこの湿地に注目する旨の回答を得た。残った湿地は今後の工事で埋められることはないし、すでに埋まった部分は元の状況に近い形に戻すとのこと。国交省の動きも、ずいぶん環境配慮型へと変わってきている。

さて、その池である。工事で本川との水路が分断されており、降海型イトヨの行き来は現状では無理。陸封型イトヨは豊岡盆地には元々いないとされている。
網を入れると、なるほどアメリカザリガニの幼体がよく採れる。小型ゲンゴロウ類も網に入った。しばらくすると親子連れがザリガニ採りに現れた。ここは昔から現在に至るまで、やはりザリガニ採りのポイントのようだ。市街地に隣接することも人気の秘密だろう。
この池とつながる湿地を移動しながら網を入れてみたが、イトヨどころか、雑魚一匹も見つからなかった。どうも現時点で魚は棲めない環境のようだ。ヨシ原では県レッドデータBランクのオオヨシキリが盛んに囀っていた。

さきほど終わった総会内、激特工事中の豊岡盆地の水辺で、魚類を含めた水生動物の現状調査をしたらどうかと提案した。イトヨにターゲットをおいてみたらどうか。今後の水辺環境回復の指標として、現時点での調査結果は生きてくる。
そんなことで、勢いづいた私たちプレ調査団は、日が暮れようとする時刻もお構いなしで、河口右岸の戸島湿地の工事現場へとポイントを移したのであった。
東の林縁に「末期の水」と呼ばれる湧き水が湿地に流れ込んでいる。昔から地元の人には知られた山清水のようだ。この清水にイトヨが誘われてくるかも? ヨシ原の泥地は水場とヌタ場になっている。獣臭がむんむんする。
ここの複数個所で網を入れてみるが、ザリガニ一つ採れなかった。湿地の中核に入れば生き物がいるにちがいないが、工事で深堀りされた溝をすくっても成果なしだった。サギ類と、コガモが少し残っていた。

戸島湿地と本流をつなぐ水路を調査した。周りの施設からの排水も流れ込んでいる。しかしカワニナやカダヤシが網に入ったから、生き物が住める環境にはある。イトヨがこの水路を伝って整備された戸島湿地に入り込む可能性もあることをうかがわせた。夕方の上空を県レッドデータAランクのミサゴが飛んだ。

戻り道の円山川右岸、田んぼの水路にいかにも「居そう」な、湧き水のプールを覗いてみた。肉眼でも魚影が確認でき、最初はシマヘビがのんびり泳いでいた。網で確認できたのはフナとメダカ。田植えの時期に水が溜まるように簡易の堰が設けてある。水質もよいこの場所、本川からのイトヨ回遊の可能性に期待しながら現場を後にする。
今後、定期的に盆地内の水路を同じように調査してみると、意外な発見があるかも知れない。本来のコウノトリ市民研究所らしく、生き物調査のモチベーションを少しずつ回復してゆきたいと思っている。
※今回、最後の湧水池の調査では、地主と思われる方から、無断で私有地に入ったことに対する注意を現場で受けた。水田内での生き物調査には同様の問題があるので、子供どうしの遊びならともかく、大人の調査ではそれなりの気遣いが必要である。今後の活動への留意事項として記録に残す。