タカブシギ

春の湛水田の常連

タカブシギ(チドリ目シギ科)
 六方田んぼで始まった冬季湛水。田んぼに水を張ったまま初めての冬を越した。強い寒波の影響で、この冬の渡り鳥たちの動きに異変があった。本来は当地で越冬するはずのツグミやホオジロの仲間が姿を見せなかった。そのかわりに、豪雪を逃れて従来の越冬地から南下してきたコハクチョウの群れが、湛水田をねぐらにしながらここで一冬を過ごしたのである。
 冬季湛水が定着すれば、いずれコハクチョウの越冬が見られるだろうと思っていた。気象条件の影響があったとはいえ、あまりにも早く結果が出たのには驚いた。
 春になり湛水田の水がぬるむころ、南の越冬地から北の繁殖地に向かうシギやチドリの渡りの群れが通過してゆく。彼らにとって、湛水田は翼を休め餌を補給するオアシスだ。渡り鳥はこうしたオアシスを中継地としながら北帰行を続ける。
 湛水田の常連といえばタカブシギだろう。体長20センチほど。漢字で鷹斑鴫と書く。羽模様がタカに似ていることから命名された。数羽の群れで行動し、湿地の中を歩き回って泥の中の虫を食べる。人が近づくと「ピピピピ」と高い声で早口で鳴きながら飛び立つ。飛んだときに腰の白が目立つのもタカブシギの特徴のひとつ。
 最近は田植え時期が遅くなった。田んぼに水が張られる頃には渡り鳥の移動のピークが過ぎてしまっている。その意味でも、冬季湛水田が渡り鳥に果たす役割は大きいのである。
(文と写真 NPO法人コウノトリ市民研究所・高橋 信)
※2005年4月30日(日)掲載