サンコタケ


腹菌類 スッポンタケ目 アカカゴタケ科 サンコタケ属
 現在は生物の世界を、 植物界、 動物界、 菌界、 原生生物界、 モネラ界の五界に分ける考え方が一般的であるらしい。モネラ界などと言われても何のことかわからないが、昔は、植物界、動物界、菌界の三界に分けていたようだ。こちらはまだ理解しやすい。注意してほしいのはキノコの属している菌界というのは、植物、動物と同格の大きな生物の一団ということだ。だから私たちは、動物や植物に興味を持つのと同じくらいキノコなどに興味を持つべきなのである。
 菌界に属するキノコの主流は坦子菌亜門の真正坦子菌綱に属しており、その中に腹菌亜綱という一団がある。面白い形のキノコが多い。
 サンコタケというキノコ。3本の腕がアーチ状になり頂部で接合している。腕は、時に4本、最大で6本になるという。腹菌亜綱スッポンタケ目アカカゴタケ科と言う分類も妙である。スッポンの首と頭のような形のキノコを親玉にして、かごを編んだような形のキノコを部隊長にしている。「サンコ」とは「三鈷」と書いて先端が三つに別れている金剛杵、密教で使われる仏具の一種だそうだ。それに形が似ているということである。
 山の中の土の上に白い卵のようなものが現れて、やがてそこからキノコが突き出てくる。3本の腕は黄色から紅色で、なかなか美しい。グレバと呼ばれる胞子を作る部分が付いて、それが黒く液化して、べとべとになって、悪臭を放ち、その匂いに引き寄せられたハエなどに胞子を運んでもらう。写真ではすでに虫たちに運ばれてしまったのか、グレバはほとんど見あたらない。サンコタケの目的は果たされたようだ。
 サンコタケとしては胞子をばら撒くことが大切であって、人間よって詳しく分類されたり、密教の仏具に例えた由緒ある名前を付けてもらうことなど、そんなことはどうでもいいのである。
NPO法人 コウノトリ市民研究所
主任研究員 稲葉一明
11月7日掲載