孤高のコウノトリ


 9月24日に5羽の飼育コウノトリが放鳥された。3年前の8月5日から豊岡盆地に定着している野生コウノトリの八五郎も、この放鳥コウノトリたちの存在を知ってか、最近は頻繁にコウノトリの郷公園へ来るようになった。しかし、一緒に仲良く行動するということはない。彼は野生コウノトリ、だから電波発信機などは背負ってないのである。
さて、今年の雪はいつになく早い。12月にこれだけ雪が積もるのは昭和59年豪雪の時以来か。普通の年なら一冬に一度来るか来ないかという寒波。12月18日午後3時、八五郎はどうしているのか気になり、彼のねぐらとする野上増殖センターに行ってみた。センターの前に設置されているビオトープ水田は雪で覆われ、わずかに水の流れのある部分のみ水面が露出している。そこでタシギという水鳥が一生懸命えさを探している。
雪が降りしきる中、八五郎は彼のお気に入りとするヒマラヤスギの枯木のてっぺんにじっとしていた。もう少し暖かそうなところもあるだろうに。首を縮めて、くちばしを胸にくっつけている。左脚は折り曲げて腹部に格納し、右脚一本で立っている。赤いはずの脚が雪で白くまだらになっている。足の指は雪に埋もれている。しもやけにならないのだろうか。時々少しだけ首を動かしている。じっとこちらを見ている。
雪が小降りになると、首をかしげて、格納していた左の足で頭の雪を掻き落とす。そして後頭部が自分の背中にくっつくぐらいにのけぞり、さらに首を伸ばして右から左へ体全体を旋回させクラッタリングを行なう。風雪の中で周囲に自分の生命を誇示している。野生コウノトリ八五郎。豊岡で4回目の冬を越す。孤高のコウノトリである。
NPO法人 コウノトリ市民研究所
主任研究員 稲葉一明
12月25日掲載