生命の強さ教える足跡


 いよいよ花火の季節がやってきた。幼少のころ、僕は夜店でよく「銭亀すくい」
をした。何匹すくっても、もらえるのは1匹だけだったのを覚えている。
 この銭亀とは、大きさが約5センチまでの幼体に付けられた呼び名。かつて銭亀
といえばイシガメやクサガメだったりしたが、最近ではもっぱら外来種であるミド
リガメがその座に置き換わっている。そのためか、イシガメやクサガメを知って
いる子供は本当に少なくなった。
 かつての銭亀はどこに行ってしまったのだろうか。
 台風23号の水害から約半月後、僕は円山川近くの水田地帯にいた。生きもの
たちが生息していた水辺の状態が心配になったからだ。そこには、あふれ出た
雨水の猛威にさらされ、厚い泥に覆われた田んぼの姿があった。
 
 ふと見ると、泥の上にある足跡が無数に残されていた。それは、まっすぐ進ん
だと思えば、カーブしたり1回転したり・・・。僕にはそれが何の足跡なのか、だい
たいの確証があった。しかし、その姿を見ることがなかなかできない。
 あちこちの水辺を巡回し、さらに下流に向かったところでようやくその姿を見つ
けた。延々と続く足跡の正体は、実は大雨で上流から流されてきたイシガメだっ
たのだ。
 僕はさらに下流に向かい、とうとう砂浜まで来てしまった。しかし驚くことに、こ
こにもあの足跡があった。大小幾筋もの足跡が砂浜全体に伸び、その先にイシガ
メとクサガメの姿。これらの個体はいったん海まで流され、高波で砂浜に打ち上げ
られたのだ。僕はその生命力に驚愕し、彼らを賞賛したい気持ちになった。よく頑
張った!
 イシガメは6~8月にかけ、田んぼの畦や畑の土に穴を掘り、両手で数えられる
くらいの数の卵を産み落とす。地味ではあるが緻密で繊細な営みだ。
 あのカメたちは、新しい産卵地を見つけることができただろうか。
 (文と写真:NPO法人コウノトリ市民研究所・竹田正義)
 ※2005年7月10日掲載


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