コバンソウ

堤防にめぐり来る四季
 
コバンソウ イネ科
 私は円山川の堤防を通勤路にしている。堤防の自然の変化はなかなか劇的で、
運転しながらでも季節の変化はよく分かる。
 春先、堤防から河川敷にかけて一面が黄色に染まる。カラシナの開花だ。黄
色の一部に白が混じるのは、捨てられた大根が野生化したものだ。その黄色や
白が消える頃、堤防が赤く染まる。これはスイバだ。スイバの花の一つ一つは
小さく地味なものだが、花の数が多く、しかもその花をつける茎がにょきにょ
きと大量に立つので遠くからでも赤く見える。
 
 このスイバの花が盛りになり始める頃、コバンソウも花の準備を始める。時
間とともに数mmの丸い穂が卵形の2cmほどの穂に変わっていく。穂が育ち
きった頃には草丈も伸びて、通勤路の両側はコバンソウで埋まっていく。緑だ
ったコバンソウが黄金色になり、茶色くなり始めた頃には、チガヤが花を咲か
せ、ブタナの黄色が増えてくる。というようにコバンソウは、私に季節を知ら
せてくれる最も身近な植物の一つである。
 
 今でこそ最もありふれた野草になっているコバンソウだが、もともとは明治
時代に観賞用として入ってきている。印象的な姿形をしているからか今でも珍
重する人があるようで、HPで検索すると種子を売っているし、鉢植えされた
写真もある。ドライフラワーとしても利用するのだという。
 
 但馬にコバンソウが増えたのは最近である。コバンソウは道路の端に非常に
多く、堤防法面や荒れ地などにも多い。30年ほど前にはまだ稀で、海岸の砂
浜近くにいくらかある程度だった。それが今は、幹線道路沿いにどんどん分布
を広げているように見える。山の中の道端でも見たこともあり、どこまで広が
るのだろうと心配になる植物の一つである。
 
(文と写真:NPO法人コウノトリ市民研究所・菅村 定昌)
※2005/5/29掲載


追記
 初めて見たときは驚いた。すごいものを採集したと思った。それが今では、
もうなんとかしないとダメだぞと憂鬱になる。
 
 印象的な形をしているので、標準和名のコバンソウだけでなく、いろいろな
地方名がある。
 
 きつねのちょうちん 山形(酒田市)
 きつねのとーろー  山形(西田川)
 たわらむぎ     山形(飽海)
 ちょーちんばな   山形(飽海)
 『日本植物方言集成』八坂書房より
 さて、この名前だが、子どもたちにはほとんどみんな意味不明である。
 つけられた当時はイメージを喚起する良い名前だったのだろうが、小判、提
灯、灯籠、俵、どれも子どもたちは全然知らない。時代劇も流行らないのでイ
メージも何もあったものではない。言葉は生きているなあと実感させてくれる
名前である。


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