アマガエル

そろそろ田んぼに帰そう


アマガエル(カエル目アマガエル科)
 「ゲコ、ゲコ」「ケレ、ケレ、ケレ」「ゲゲ、ググ、ゲゲ」。日が暮れ、辺りはカエルたちの大合唱に包まれている。僕はそんな夕暮れの田んぼが好きだ。田んぼを舞台にした生きものたちと人の営みの中に、幼少時代の懐かしい記憶が感じられてくる。いつまでも変わらない田んぼの姿がそこにはある。
 僕は、今までにたくさんのカエルたちに出会ってきた。足の踏み場も無いほどに群れるアカガエル、泡状の卵塊が数え切れないほどのモリアオガエルの楽園…。水辺を歩けばいつもカエルたちがそこにはいる。中でも、畦を歩くと必ず出会うのがアマガエルだ。その吸盤で器用に移動する様子もさることながら、七変化する体色などは観察していても飽きることがない。アマガエルはいつも僕のそばにいる、最も身近なカエルなんだ。
 ところが、このアマガエルについて、僕自身、最近になってようやく知ったことがある。というより、今まで気付いていなかったことに気が付いた、と言った方が正しいかも知れない。それは、僕の知らないオタマジャクシのワンダーランドだった。
 6月、僕は田んぼにいるたくさんのオタマジャクシを見つけた。そこで水を泥ごと網ですくってみたら、実にいろんな姿形のオタマジャクシが入った。プラスチック容器に入れて、上や横からじっと見てみると、どうも尾の形状や目の位置、体色が微妙に違っている。僕には、それが違う種類であろうことはすぐに想像できた。しかし、どのオタマジャクシがどの種類なのか…。僕には、カエルからその種類が分かっても、オタマジャクシから種類が分かるだけの知識がなかったのだ。僕は全く盲点をつかれてしまった。
 オタマジャクシはどんなカエルになるのか。僕はあるオタマジャクシを持ち帰り、カエルに変態するまで飼育してみることにした。すると、これがなかなか面白い。パクパクさせて植物を食する小さな口や、ある日突然出てくる前足など、そこには僕の知らないオタマジャクシの姿があったのだ。
 飼育を始めてから約二ヶ月後、そのオタマジャクシはすっかりアマガエルになった。「なるほど、両目が離れていて尾が立派なのは、アマガエルのオタマジャクシだったんだ」。僕の観察ノートは、あっという間にオタマジャクシとカエルの絵でいっぱいになった。
 「ゲコ、ゲコ」。水槽の中のアマガエルが鳴き始めた。そろそろ田んぼに帰そう。
 僕たちが知らないことはまだまだありそうである。
(文と写真:NPO法人コウノトリ市民研究所・竹田正義)
※2005/5/23掲載


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