メジロ

ウグイスと間違わないで

メジロ(スズメ目メジロ科)
 メジロは里の鳥として古くから親しまれてきた。目が白いからメジロ。直感的である。メジロにまつわるエピソードの中で、ウグイスとの混同は今でも続いていて、いまさらなところもある。鴬色といえば深い緑色を思い浮かべるが、実際のウグイスの羽根色は地味な茶褐色である。鴬色と呼ばれる緑は、実はメジロの羽根色とよく一致する。
 花札に「梅に鴬」がある。あれがウグイスだと思っている人が多い。改めて見て欲しいのだが、描かれているのは何とも不思議な鳥である。背中は緑で、顔から下が黄色、目は赤である。こんな鳥は日本にはいない。ましてや全身褐色のウグイスとは似ても似つかない。絵柄だからという視点で見ても、ウグイスとはほど遠い。この鳥はきっとメジロを描いたものだ。目が白いという一番の特徴がないが、背中の緑はメジロと一致する。
 そもそも、ウグイスが梅の木に止まることはまずない。冬のウグイスは笹藪の中に身を潜めて地面を徘徊している。一方のメジロは、花の蜜が大好物。真冬に咲くツバキやサザンカに飛来しては、花にくちばしを突っ込んで蜜を吸う。梅が咲けば梅の花にも寄ってくるのがメジロである。
 メジロは冬の花から蜜を頂くかわりに、虫のいないこの季節の大切な花粉媒介者として役立っている。ウグイスとともに身近な鳥ゆえの混同が続いているが、庭木にもよくやってくるメジロの益鳥としての一面を知ってみるのも面白い。鴬色をした目の白い小鳥を見かけたら、今度は間違えずにメジロと呼んでやってほしい。メジロは決して「ホーホケキョ」とは鳴かないのである。
文と写真 NPO法人コウノトリ市民研究所・高橋 信
※2007年2月25日(日)掲載