タゲリ

帰って来た六方田んぼのシンボル

タゲリ(チドリ目チドリ科)
 台風23号の大洪水で泥の海と化した六方田んぼ。今も耕作できない農地が残っているが、1年経って多くの田んぼは元気を取り戻した感がある。
 豊岡盆地には毎年10月の終わりに群れで飛来し、田んぼで虫を採りながら冬を越すタゲリ。冬の六方田んぼのシンボルとして、野鳥ファンには古くから愛されてきたチドリだ。このタゲリの姿を、昨冬はほとんど見ることができなかった。
 秋晴れの円山川堤防、上空を3羽のタゲリが北に向かって飛んだ。ひょっとして六方田んぼに下りているかも知れない。そう思いながら、最近になって水が張られた田んぼの一画に向かった。
 年間を通して水を張り休耕田をビオトープ化する試みが、豊岡盆地ではすでに始まっている。コウノトリの試験放鳥を受け、冬の田んぼに水を張る「冬季湛水田」も今年から本格的に行われる。六方田んぼでも大きな面積で水が張られ、秋以降の田んぼの風景が変わろうとしている。
 そんな湛水田に予想通りタゲリの群れを見つけた。2年ぶりに帰って来たタゲリの群れは、畦で眠っているもの、水浴びをするもの、しきりに餌を採っているもの、全部で18羽を数えた。アンテナのようにピンと立てた冠羽と、光によって微妙に光沢が変化する深緑の羽根が美しい。
 突然「ミュー」とネコのような鳴き声を上げたかと思うと、群れは一斉に舞い上がって北方向に飛んで行った。近くで飛ばしはじめたラジコン飛行機に驚いたのだ。田んぼを南北に貫く農道はひっきりなしに車が通過する。人の生活と隣り合いながらも、野生はしたたかにここで生きてゆく。放鳥コウノトリもきっとそうであってほしい。
文と写真 NPO法人コウノトリ市民研究所・高橋 信
※2005/11/13掲載